離婚後の不貞行為の慰謝料請求についてのご相談

今回は、離婚後に元夫の不倫が判明した女性からのご相談です。

 

ご相談

半年前に離婚をして二人の子供を育てているシングルマザーです。

夫婦で性格が合わずに喧嘩が多くなったことなどから、協議離婚をしました。

協議離婚をしたときに、離婚協議書を作り、養育費や財産分与などについて取り決め、慰謝料は双方なしということで合意しました。

ところが、最近になり、実は夫が離婚前に不倫をしていたことがわかりました。

慰謝料なしの合意をしてしまいましたが、その時は不倫のことを知らなかったので、今からでも慰謝料の請求はできるのでしょうか?

 

アドバイス

離婚後に相手が不倫していたことが判明するとショックですね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

離婚するときに「慰謝料なし」という合意をしている場合に、実は相手が離婚前に不倫をしていたと判明するケースは時々あるようです。

このような場合、後から慰謝料を請求することはできるでしょうか。

 

慰謝料なしの合意をしている場合でも請求できる可能性はある

離婚後であっても、時効になっていなければ慰謝料請求をすることはできます。

ただし、「慰謝料なしの合意」をしている場合には、請求することは基本的に認められません。

合意した内容にはお互いが拘束されることになるので、一方的に合意内容を取り消すことは基本的にできないからです。

 

ただし、今回のご相談のように、合意する前提としての事実(お互いに有責事由がない)が異なっている場合(実際には不貞行為があった)には、合意内容が無効となり、慰謝料請求が認められた判例があります。

 

判例の内容

夫が不貞行為を行っており、不貞相手を妊娠させていたにもかかわらず、その事実を知らなかった妻と慰謝料なしの離婚協議書を作成した。

離婚後にその事実を知った元妻が、錯誤があったため離婚協議は無効であると主張し、それが認められ妻からの慰謝料請求が認められた。

 

 

証拠の必要性

この判例からもわかるように、不貞行為の事実を知らずに慰謝料請求をしない旨の合意をした場合には、後から慰謝料請求が認められる可能性があります。

ただし、慰謝料を請求するためには、基本的に証拠が必要です。

 

この判例の場合には、不貞相手が妊娠していることから不貞行為の事実や時期の証明をすることができたのだと考えられますが、通常離婚前に不貞行為があったことを証明するのは難しいケースが多いと考えられます。

 

今回、相談者さんがどのような経緯で元夫が離婚前に不倫していたことを知ったのかはわかりませんが、それを証明できる証拠が必要です。

 

証拠は、単に不倫相手と親密な関係だったことだけでなく、実際に肉体関係があったことまで証明する必要があります。

  

離婚原因ではないため高額な慰謝料請求は難しい

今回、相談者さんご夫婦は「性格が合わずに喧嘩が多くなった」ことから離婚したということなので、性格の不一致による離婚だと考えられます。

そのため、元夫が離婚前に不倫をしていた場合でも、それが離婚原因となることはないでしょう。

 

不貞行為による慰謝料は、離婚原因となった場合とそうでない場合とでは、評価が異なります。離婚原因となった場合の方が慰謝料は高額となることが一般的です。

 

そのため、仮に慰謝料請求が認められた場合でも、想像よりも低額の慰謝料しか認められない可能性もあるので、注意が必要です。

 

まとめ

不倫の事実を知らずに慰謝料なしの合意をして離婚した場合、証拠があれば後から慰謝料請求が認められる可能性はあります。

ただし、慰謝料請求が認められない可能性や、低額しか認められない可能性も高く、過度な期待は禁物です。

まずは元夫に対し、不貞行為の事実を知ったことにより慰謝料請求を考えていることを伝え、話し合いをするとよいのではないでしょうか。

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子供名義の預金と財産分与に関するご相談

今回は、子供名義の預金が財産分与の対象になるかについてのご相談です。

相談内容

妻と離婚することが決まり、財産分与についての話し合いをしています。

結婚後の預金は私名義でも妻名義でも財産分与の対象になるということは理解しており、お互いに開示しました。

それ以外に子供名義の預金があるのですが、財産分与の対象となるのでしょうか。

私たちには小学生の子供が二人いて、子供達の名義で10年ほど積み立てた預金が数百万円あります。

離婚後は妻が親権者になるので、子供名義の預金も実質的に妻が管理することになり、何となく納得がいきません。

 

アドバイス

 子供名義の預金が財産分与の対象になるのかは、気になるところですね。私にできるアドバイスをさせて頂きます。

 

子供名義の預金については、明確な決まりがあるわけではないものの、お金の出所や性質によって財産分与の対象となる場合とならない場合があります。

 

財産分与の対象となる共有財産は、夫婦が結婚期間中に協力して築いた財産です。

そして、財産の名義が子供の場合でも、実質的には夫婦の財産と考えられる場合には、財産分与の対象となります。

 

財産分与の対象となるかどうかのポイントは、以下の通りです。

 

ポイント①お金の出所

まずは預貯金の原資がどうなっているかがポイントです。

 

結婚期間中に夫婦が得た収入を貯金した場合には、その貯金は共有財産となり財産分与の対象となります。

そのため、夫婦の収入を原資として子供名義で預金した場合には、その預金も財産分与の対象とすることが基本です。

 

子供がアルバイトして貯めたお金や、祖父母が孫に贈与したお金などは、子供の固有財産となるため財産分与の対象とはなりません。

 

なお、児童手当を子供名義で貯めていた場合にも、財産分与の対象となる可能性は高いでしょう。

 

相談者さんの場合、子供の名義で夫婦の収入から毎月積み立てた預金のようなので、財産分与の対象となる可能性が高くなります。

 

ポイント②子供の年齢

子供が自分で預貯金を管理できる年齢になっている場合には、子供の預貯金は子供自身の固有財産として扱い、財産分与の対象とはしないケースが多くなります。

そのため、子供の年齢が高くなればなるほど、子供自身の財産として扱われる可能性が高くなります。

 

ポイント③預貯金の額

預貯金の金額が高額である場合には、財産分与の対象となる可能性が高くなります。

相談者さんの場合、数百万円の預貯金ということで、小学生の子供が自由に管理、処分するにしては高額であるため、子供の固有財産とは判断されずに財産分与の対象となる可能性が高くなります。

 

ポイント④財産分与の対象から外すべき事情の有無

子供の養育に通常よりもお金がかかる事情がある場合や、養育費が低額の場合などは、子供の預貯金を財産分与の対象外とする可能性が高くなります。

たとえば子供に障害があり自立することが難しいケースや、非監護者の収入が低くて養育費が低額というケースなどが考えられます。

 

ポイント⑤子供に贈与されたものではないか

夫婦の収入から子供名義で預貯金した場合でも、それが子供に対する贈与されたものと判断される場合には、子供の固有財産となり財産分与の対象とはなりません。

子供がお小遣いやお年玉を貯めた場合には、そのお金は子供に対して贈与されたものと考えられるので、子供自身の財産として扱われ、財産分与の対象とはなりません。

 

まとめ

相談内容だけで判断する限り、相談者さんのお子様名義の預貯金は財産分与の対象となる可能性が高くなります。

ただし、これはそれぞれの事情によって夫婦間の話し合いで判断すべきものなので、相手の意見も聞いて双方納得のいく結論を出すことが大切です。

口座内にお年玉やお小遣い、親が積み立てたお金など複数の内容のものが含まれているケースも多いため、まずは通帳の取引明細を確認するとよいでしょう。

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離婚原因が相手にあることの証明についてのご相談

今回は、相手が原因で離婚した場合の証明についてのご相談です。

 ご相談


夫の不貞が原因で離婚しようと思っています。不貞については夫も認めており、離婚には同意していて、今は条件について話し合っているところです。
離婚した場合に、離婚原因が夫にあったことを証明することはできるのでしょうか。
年齢的にいずれ再婚を考える可能性があるので、そのときに離婚原因が自分ではなく夫にあったことを明らかにしたいです。

 

アドバイス


相手が離婚原因を作った場合には、そのことをはっきりさせておきたいですよね。私にできるアドバイスをさせて頂きます。

 

1.慰謝料について取り決め、公正証書を作成する

 

相手の不貞行為が原因で離婚する場合には、高額でなくてもよいので慰謝料を受け取るようにしましょう。
そして、慰謝料について取り決めた内容は必ず文書にして、双方の署名捺印をしましょう。
公正証書で作成するのがベストです。

 

公正証書は、公証役場という公的な機関で作成する文書です。公証人の前で当事者同士が内容を確認し、認めたうえで、最後に書類に署名捺印をします。


公証人は、当事者の本人確認と文書の内容の確認を行ったうえで文書を完成させるため、本人たちが間違いなく公正証書に書かれた内容を認めたことになります。
そのため、公正証書に書かれた内容は、証拠能力や信用性が高くなります。
公正証書の原本は公証役場に保管されるため、万一紛失しても安心です。


2.慰謝料は、夫と不貞相手の両方に請求できる

 

慰謝料については、配偶者と不貞相手の両方に請求するとよいでしょう。
ただし、二人に請求すれば二倍もらえるというわけではなく、配偶者と不貞相手は連帯債務者になって、二人で慰謝料を分担して支払うのが普通です。

 

たとえば、不貞行為の慰謝料を200万円と考えている場合、この200万円について配偶者と不貞相手は連帯債務を負っていることとなり、あなたは200万全額を配偶者に請求することも、不貞相手だけに請求することも可能です。

 

夫については、離婚協議の内容の一部として慰謝料について盛り込んだ公正証書を作成することになります。

文面には、単に慰謝料いくらを支払う、というだけでなく、「不貞行為による慰謝料としていくら払う」と記載するほうがよいでしょう。

 

離婚する場合、慰謝料と財産分与を分けて考えずに、両方をまとめた形でいくら支払う、としてしまうケースもありますが、そうすると相手が離婚原因を作ったことが明確になりません。

あくまでも財産分与と慰謝料は別々のものとして考え、それぞれについて金額等を決めましょう。

 

一括での支払いが困難な場合には、分割払いの方法を取り決めることもあります。
分割払いの場合には、途中で不払いになることを防ぐため、必ず公正証書を作成しましょう。万一不払いになった場合に、すぐに強制執行を申し立てることができます。

 

3.不貞相手とは示談書を作成する

 

不貞相手とは、慰謝料について取り決めた示談書を作成するとよいでしょう。こちらについても可能であれば公正証書を作成しましょう。


示談書には、夫との不貞行為があった事実を認めること、それによる精神的苦痛や夫婦関係を破壊させたことに対する慰謝料の支払い義務を認めることを記載しましょう。

 

ただし、不貞相手との示談書や夫との離婚協議書については、むやみに人に見せるべきものではありません。
示談書には、この件を第三者に一切公表しないことを約束する秘密保持条項を付ける場合もあり、その場合は当然約束を守らなければなりません。


むやみに公表すると、場合によっては名誉棄損などの犯罪になってしまう可能性や、慰謝料請求をされてしまう可能性もあります。

これらの書類はあくまでもお守りのようなものとして、いざというときに自分の潔白を証明できるものという程度に考えておきましょう。

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有責者からの離婚請求についてのご相談

今回は、自分が有責者の場合に離婚したいというご相談です。


ご相談


私は不倫をしてそれが妻にばれてしまいました。
私としては、すでに夫婦関係はずっと前から冷え切っていることもあり、このまま離婚したいと思っています。
有責者からの離婚請求は認められないと聞きましたが、やはり私から離婚を請求することはできないのでしょうか。
妻に離婚したいことをやんわり伝えたことはありますが、はっきりした返答はありませんでした。
私としては調停や裁判になってでも離婚したいです。

 

アドバイス


有責配偶者からの離婚請求が認められるかは気になるところですね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.離婚裁判では、法定離婚事由がなければ離婚できない。


相談者さんは、調停や裁判になってでも離婚したいとのことです。
まず、調停については、話し合いの場が家庭裁判所になって調停委員が介入することになるものの、基本的に当事者間の話し合いとなります。
相手が合意してくれない限り、離婚することはできません。
ただ、相手が合意してくれるのであればどんな理由であっても離婚は可能です。

 

調停が不成立となり、離婚裁判をする場合には離婚できる原因が限定されます。
「法定離婚事由」のどれかに該当することが必要です。
法定離婚事由の中には、「不貞行為」があります。
今回相談者さんは自身が不貞行為を行ったということで、法定離婚事由に該当しているかのように見えます。

 

ですが、これはあくまで不貞行為をされた側からの訴えによる場合に認められるものです。
基本的に、不貞行為をした本人から不貞行為を理由とした離婚請求は認められません。

 

そうなると、それ以外の法定離婚事由があるかどうかが問題となります。
相談者さんの書かれている、「夫婦関係はずっと前から冷え切っている」というのがどのような状況かわかりませんが、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する場合には離婚が認められる可能性があります。

 

ただし、この離婚事由が認められるには、通常は長期間別居しているなどと言った客観的にみて夫婦関係が破たんしているとみなされるような状況であることが求められます。

「夫婦関係はずっと前から冷え切っている」と思っているのは、相談者さんだけという可能性もあります。特に、不貞行為を行った有責配偶者である相談者さんからの離婚請求が認められるのは、とてもハードルが高いのが実情です。
裁判をしても離婚が成立する可能性は低いでしょう。

 

2.離婚を望むなら、相手との条件交渉が現実的


では、どうしても離婚したい場合はどうすればよいでしょうか。
このような場合、現実的な方法として、相手の望む条件をできるだけ受け入れ、相手に有利な条件での離婚を協議や調停によって成立させるのがよいでしょう。

 

相手の性格にもよりますが、相手からの愛情が冷めている状態での結婚生活を継続させるよりは、自分の希望条件がかなうのであれば離婚に応じようと考える人が多いでしょう。

 

相手が離婚を拒否する場合には、なぜ離婚したくないのかを冷静に尋ねましょう。
金銭的な不安がある場合や、子供が卒業するまでは待ってほしいなどというケースも多いので、それであればその問題を解消するような提案をしてみましょう。

 

離婚をする際には、様々な条件を決めることになります。
財産分与、慰謝料、親権、養育費などについて取り決める必要があります。相手の希望に耳を傾け、できるだけ沿うような内容にしましょう。

 

けんか腰の態度だと、相手も頑なな態度になってしまうことも多いので、できるだけ冷静な話し合いをすることが大切です。

 

なお、一方的に別居を続ければ離婚が認められると考える人もいますが、あまりおすすめできません。一方的な別居は「悪意の遺棄」と認定されることがあり、ますます自分の有責度が高くなります。場合によっては慰謝料が高額になったり、離婚請求においても不利になる可能性があります。

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財産分与(将来の退職金)についてのご相談

今回は、将来の退職金を財産分与で請求できるかについてのご相談です。

 

ご相談


もうすぐ夫と離婚予定の40代女性です。性格の不一致による離婚なので、お互い慰謝料は無しということは納得しています。
今は財産分与について話し合いをしているところです。夫は大企業勤務で将来それなりの退職金をもらえる見込みですが、退職金を財産分与で請求することはできますか?夫は50歳なので、退職金がもらえるのは10年程度先になる見込みですが、それまで会社を辞めることはないと思います。

 アドバイス


まだ支払われていない退職金を財産分与で請求できるかは、気になるところですね。
私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.将来の退職金を財産分与で請求できるのか


将来支給予定の退職金を財産分与で請求できるかは、ケースによって異なります。
財産分与の対象財産と認められるためには、いくつかのポイントがあります。

 
①会社の就業規則などで、退職金が支給されることになっているのか。


そもそも会社に退職金制度があるかどうかですが、この点は今回のご相談のケースでは問題ないかと思います。

 
②会社の経営状況に問題がないか。


会社の経営状況が悪化して最悪倒産してしまった場合、退職金は支給されません。
そのため、会社の経営状況も退職金の支給見込みの判断材料となり、支給される見込みが低ければ財産分与の対象とするべきではありません。

 

③退職金がもらえるまで勤務する見込みが高いか。


退職金制度のある会社であっても、勤続年数が短かったり途中で退職する可能性が高い場合には、退職金が支給されなかったり、支給されるとしても少額しか支給されない可能性があります。そのような場合には、退職金を財産分与の対象とすべきでないとされたり、対象となる退職金を低く計算したりすることがあります。

ご相談のケースでは、定年退職まで勤務見込みということなので、この点は問題ないかと思います。

 
④支払いまでの期間がどの程度あるか。


退職金が支払われるまでの期間が10年以上あるような場合だと、途中で辞めてしまう可能性や経営状況や退職金制度が変わる可能性なども高くなり、退職金の見込みの蓋然性が低くなってきます。そのため、支払いまでの期間が長くなるほど退職金を財産分与の対象とできる可能性が低くなります。

今回のご相談のケースでは、約10年後の支払いとのことなので、相手が任意で応じてくれない限り、財産分与として請求するのは難しい可能性が高くなります。

 2.財産分与の対象とする場合の計算方法


財産分与の対象とする場合の計算方法は明確に決まっているわけではありませんが、一つの例として紹介します。

①定年退職時の退職金の見込み金額を算出する。(大手企業ということなので、役職ごとの見込み退職金額がある程度わかるかと思います。)
②その見込み退職金額から、結婚前と別居後の勤務分を差し引きます。

(例)
退職金見込み額 2000万円
22歳から60歳まで勤務
28歳で結婚、50歳で別居、離婚

2000万円×22(結婚年数)/38(勤続年数)=約1158万円
この1158万円からさらに、将来もらうはずのものを今受け取ることによる利息を控除します。
この例の場合には、将来の退職金のうち、1150万円程度を財産分与の対象とすることが考えられます。

 

 

 

まとめ

今回のご相談のケースで退職金を財産分与の対象として請求できるかどうかは微妙なところです。ただし、相手が任意で支払ってくれるのであれば問題ありません。相手との話し合いの中で、将来の退職金を財産分与の対象にするケースもあることを伝えたうえで、お互い歩み寄りができないかを探り合っていってはいかがでしょうか。

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面会交流についてのご相談

今回は、面会交流の約束を実現する方法についてのご相談です。

 

ご相談

現在、妻と離婚協議をしているところです。子供が二人いますが、私一人で子育てすることは現実的でなく、親権については妻に譲るしかないと考えています。
ただ、毎月の子供たちとの面会交流を実施することを条件にしたいと思っています。


妻も現時点では、面会交流には応じると言っていますが、これまでの妻の言動を考えると約束を本当に守るのか不安を感じています。
妻に約束を守らせるための対策はありますか?また、約束を破った場合に強制する方法はありますか?

 

アドバイス

親権を譲る代わりに面会交流の実施を求めるのは、親として自然なことですね。
私にできるアドバイスをさせて頂きます。

1.面会交流は子供にとっての権利でもあり、拒否は原則不可

面会交流は、親にとっての権利であると同時に、子供にとっての権利でもあります。
親の勝手な都合で面会交流を拒否することは、原則的に認められません。
ただし、面会交流させることで子供に悪影響があるような場合には、拒否することが認められることがあります。

 2.面会交流の約束不履行を防ぐには、離婚時に公正証書で取り決めを行う

面会交流の約束不履行を防ぐには、養育費の話と併せて面会交流についてしっかりと取り決めを行いましょう。離婚協議書は公正証書で作成しその中に面会交流についても記載することが大切です。
内容は、できるだけ具体的に定めておくほうがよいでしょう。以下の内容などについて、きちんと取り決めておきましょう。


①面会交流の方法(直接会う、電話、メール、手紙など)
②面会日や時間
③面会の頻度
④面会する場所
⑤送迎方法
⑥交通費をどうするか

 

公正証書を作成する場合、基本的に当事者双方が公証役場に出向き、公証人の前で約束内容を確認の上、書類に署名捺印をします。

そのため、当事者間で作った離婚協議書以上に心理的なプレッシャーを感じることが多く、約束を守る可能性が高くなります。

ただし、たとえば養育費などの金銭的な請求権については、「約束を破ったら強制執行に服する」という旨の文言を付けることができますが、面会交流についてはそのような文言を付けることはできません。

 

3.約束を破られた場合

面会交流の約束を相手が守らない場合の対応としては、まずは面会交流調停の申し立てをすることが考えられます。

相手が約束を守らないからといって、自力で勝手に子供を連れだすようなことは絶対にやめましょう。場合によっては、未成年者略取・誘拐などの罪に問われる可能性があります。

調停による話し合いをしても不成立となった場合、自動的に審判の手続きに移行します。そこで家庭裁判所が面会交流を認める決定を出してもらうことで、面会交流の権利があることを確定してもらうことができます。

 

 4.調停や審判の決定にも相手が従わない場合

調停や審判で面会交流が決定したにもかかわらず、相手がそれに従わない場合には、2つの対処法が考えられます。

①家庭裁判所に申し出をして、履行勧告を出してもらう。

履行勧告は、家庭裁判所が、約束を守らない相手に対し、電話を掛けたり書面で通知することにより、面会交流を行うように勧告することです。
この申し出は、簡単に調停、審判を行った家庭裁判所に電話等で申し立てることができます。

 

②家庭裁判所に間接強制の申し立てをする。

間接強制は、面会交流を拒否すると、一回当たりいくらのペナルティーを支払う、という命令を家庭裁判所が出すことで、間接的に面会交流を強制することです。

面会交流については、子供の気持ちなどもあるため直接的な強制執行は認められていませんが、金銭的なペナルティーを与えることによる間接強制は認められているのです。

近年、裁判所は面会交流の重要性を認識しており、間接強制のペナルティーも高額を命じるケースも多くなりました。一度も面会交流の約束を守らないような悪質なケースでは、1回あたり50万円以上のペナルティーを課したケースもあります。

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別居時に用意する書類に関するご相談

今回は、離婚前に別居を考えている方からのご相談です。

【ご相談】
妻と離婚の話し合いをしており、離婚前に別居しようと考えています。
私が家を出る形になりますが、その際に準備しておいた方がいい書類などはあるのでしょうか。

【アドバイス】
離婚前に別居される夫婦は多いですね。
衝動的に別居してしまうと、必要な書類を別居前の家に置いてきてしまい後から困るようなケースもあります。


離婚の際には様々な書類が必要となります。

主に以下の書類を用意することをお勧めします。

1.収入のわかる資料
離婚前に別居をする場合、別居中も夫婦は婚姻費用を分担する必要があります。
婚姻費用というのは、生活費と考えてもらえば大丈夫です。
婚姻費用は、夫婦それぞれの収入をもとに計算することになります。


そのため、夫婦の収入がわかる資料が必要です。
給与所得者の場合、昨年末に勤務先で発行された源泉徴収票を用意しましょう。
基本的に、源泉徴収票の支払金額の欄に書かれた金額をもとに婚姻費用を計算することになります。

お子さんがいる場合、離婚後の養育費もこの源泉徴収票に書かれた夫婦の年収をもとに計算することになります。

自営業者の場合には、前年度の確定申告書を用意しましょう。

また、家庭裁判所での婚姻費用の調停をする際、給与明細3か月分の提出が必要になる場合があるため、給与明細もきちんと手元に残しておきましょう。

2.共有財産のわかる資料
離婚するときには、結婚期間中に夫婦で協力して築いた財産(共有財産)を分け合うことが必要です。これを財産分与といいます。
財産分与をするためには、共有財産を把握しておく必要があります。
共有財産には様々なものがありますが、主なものについて説明します。


①預貯金
財産分与の際は、通常別居時の残高を共有財産として算定します。別居後に増えた預貯金は夫婦で協力して築いた財産とは考えない場合が多いからです。
通帳の記帳を行い、別居時の残高を確認しておきましょう。

また、自分の口座から引き落とされている固定費の内容を確認しておきましょう。電気代、ガス代、水道代、新聞代、家賃、通信費などがどれだけかかっているかを把握しましょう。婚姻費用を算定するときに、このような固定費を自分が負担している場合には、すでに婚姻費用を分担していることになり別途支払う必要はない可能性があります。

結婚前から持っていた預貯金は原則として財産分与の対象にはならないので、結婚前の時点の残高も把握するために古い通帳なども手元に置いておきましょう。
また、配偶者が預貯金を隠す可能性があるため、配偶者の預貯金の情報(金融機関名、支店名、口座番号、残高など)を記録しておきましょう。

 

②不動産
結婚後の購入であれば、不動産も財産分与の対象となります。
不動産の内容や評価額を把握できる資料を用意しておきましょう。
法務局で取得できる不動産の登記事項証明書、毎年自治体から送られてくる固定資産税課税明細書、不動産購入時の売買契約書や住宅ローンの契約書などを用意しておきましょう。

③生命保険、有価証券
解約すれば解約返戻金を受け取れる生命保険は財産分与の対象になります。生命保険については、解約返戻金の予定額が共有財産を計算するときの評価額になります。

株式などの有価証券も結婚後に取得したものであれば基本的に財産分与の対象となります。 共有財産の評価は、基本的に離婚時の株式の時価となります。

生命保険については保険証券を、株式などの有価証券については証券会社の残高証明書などを用意しておきましょう。

④自動車
自動車については時価が共有財産を計算するときの評価額となります。
時価は、中古車販売店のホームページなどを参照して、同じ車種、年式、走行距離などのものを探してみましょう。
自動車については、車検証の写し一式を用意しておきましょう。

 


3.債務の内容がわかる資料
結婚後の債務がある場合、債務の内容がわかる資料を用意しておきましょう。
多いのは、住宅ローンや自動車ローンでしょう。
ローンを組んだ時の金銭消費貸借契約書や、支払予定表などを一式用意しておきましょう。


債務の残高がプラスの共有財産よりも多い場合には、財産分与は基本的には行いません。
ただし、債務も夫婦で分け合うかというと通常そのようなことはなく、債務者になっている人が一人で債務を引き続き返済することになります。

4.相手が有責の場合、その証拠となる資料
相手に離婚原因がある場合、その証拠となる資料を別居前に集めておきましょう。
別居してしまうと入手するのが困難になります。


たとえば不貞行為があった場合、相手と不貞相手が写った写真、相手の行動を記録した日記、相手と不貞相手のメールのやり取り、不貞相手からもらった手紙やプレゼント、相手が不貞相手と使ったクレジットカードの利用明細など、少しでも役に立ちそうなものは記録を残しておきましょう。


裁判などの証拠としては使えなくても、相手との交渉の際に役に立つこともあります。

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住宅ローンと財産分与についてのご相談

今回は、財産分与の代わりに住宅ローンを返済してもらえるかについてのご相談です。

【ご相談】
夫と離婚することが決まり、財産分与や養育費について話し合いをしています。
中学生の子供の親権は、私が持つことで合意しています。
今は家族で夫が住宅ローンを返済中の家に住んでおり、離婚後も私と子供がこの家に住みたいと考えています。


夫は、財産分与と養育費の代わりにするのであれば、今後も住宅ローンの返済を続けると言っています。
夫からは、自分の住居も探す必要があるため、それ以外に財産分与や養育費を払うことはできないとも言われています。


私としては子供のためにも今の生活環境をできるだけ変えたくないので、その案に乗ろうかと考えています。
何か問題はあるでしょうか。

 

【アドバイス】
財産分与や養育費の代わりに住宅ローンを支払ってもらいたい、というご相談は結構多いですね。
当事者同士で合意すれば、そのような方法も可能ではあります。
ただし、実は様々なリスクがあるので、慎重に判断する必要があります。

①金融機関との関係や住宅ローン控除の問題
銀行等で住宅ローンを組む際に、本人が居住するという条件で審査をして融資が実行されています。


住宅ローンは通常のローンよりも金利などの条件が優遇されており、それはローンの名義人本人が住んでいる家であればしっかりローンを返済する見込みが高いという理由もあります。


そのため、本人が住所を変更する場合には通常金融機関に申し出る必要があり、その際に金融機関から契約違反を指摘される可能性もあります。(ただ、実際には返済が滞らない限り黙認する金融機関が多いようです。)

また、住宅ローン控除による減税を受けている場合、本人がその家に住んでいなければ控除を受けることができません。ご主人がそのことをきちんと理解していればよいですが、そうでなかった場合に後から思わぬ税金が増えたことでトラブルになる可能性があります。

 

②ローンの支払いが滞るリスクの問題
離婚の際はご主人がきちんとローンを返済すると話していても、今後のご主人の状況により、その約束が守られる保証はありません。
自分が住んでいない家のローンを払い続けるのは、通常気の進むものではありません。


特に、ご主人が離婚後に再婚した場合には新たな家族との生活を優先する可能性が高いでしょう。
離婚から年月が経ち、関係性が希薄になればなるほど返済が滞るリスクは高まります。
しかも、相談者さんはご主人が返済を続けているのかどうか当事者ではないため把握することができません。

万一ご主人のローンの返済が滞ると、金融機関は抵当権を実行して、自宅が競売にかけられるなどということが起こります。そうなると、相談者さん親子は家を出ていかなければならなくなります。
ご主人の自主的な支払いに委ねるのは、リスクが高いと言わざるを得ません。

③家の名義の問題
家の登記の名義は、ご主人一人であると想像します。
そうすると、あくまでもこの家はご主人のものであり、相談者さんがいくら住み続けても相談者さんの財産になることはありません。

離婚する際に名義を妻(相談者さん)に変えればいいと思うかもしれませんが、ローン返済中であればそれは金融機関が簡単には認めてくれません。
金融機関に無断で名義を変えると、契約違反としてローンの一括返済を求められるリスクもあります。

ローン返済後に名義を変えればいいと思うかもしれませんが、離婚から長い年月が経った後にご主人がそれに応じてくれる保証はありません。
また、離婚から時間が経っているため、名義を変えるには贈与税が課税される可能性が高いでしょう。

ご主人のものであるということは、家をどのように処分するかはご主人の権限で決めることができます。
ご主人が売却したいと思えば、相談者さんはそれを止めることはできません。
いつまで家に住み続けられるのか不安定な立場となってしまうのです。

また、将来的にご主人が死亡して相続が発生したとき、お子さんはご主人の相続人となりますが、相談者さんは相続人になりません。
ご主人が再婚していなければお子さんが家を相続できることになりますが、再婚していれば妻や子供も相続人となります。
ご主人がお子さんにこの家を相続させるという遺言を残してくれればよいですが、そうでない場合にはほかの相続人と遺産分割協議をしなければなりません。

確実に家を自分の名義にしたいのであれば、お金を貯めてご主人から家を買い取るなどの方法しかありません。


以上のようなリスクや問題があるため、慎重に考えた方がよいでしょう。
相談者さんが、期間限定であと3年だけこの家に住みたい、というような場合にはよい方法かもしれませんが、長期にわたる場合にはリスクが多いためあまりお勧めできる方法ではありません。


期間限定で妻と子供が夫名義の家に住み続ける場合には、その旨の契約書を作っておきましょう。
たとえば、お子さんが高校を卒業するまでの間にご主人との賃貸借契約を結び、それまでの間、事実上養育費の代わりに住宅ローンを支払うという内容の契約を結ぶことなどが考えられます。

このような特殊な契約を含めた離婚協議書を作るには、なるべく弁護士に相談した方が安心です。

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離婚前の別居についてのご相談

今回は、離婚前の別居についてのご相談です。


【ご相談】
妻との離婚を考えています。
離婚自体は妻も同意していますが、子供もいるので色々と条件を決めるまでには時間がかかりそうです。
ただ、すでに夫婦関係は最悪なので、一緒に暮らすことはお互いにとってストレスでしかありません。
私はすぐにでも別居したいと思っていますが、別居することで不利になることはあるのでしょうか。
また、別居すると家賃などのお金が余分にかかりますし、妻に家事をやってもらうわけでもないので、今まで払っていた生活費を払いたくないのですが払わない方法はありますか?

 

【アドバイス】
離婚前に別居をする夫婦は沢山いらっしゃいますね。
別居にはメリットもありますが注意点もあります。
私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.一方的な別居は問題になる
別居をする場合の注意点として、一方的に別居することは避けましょう。
夫婦には同居する義務がありますので、相手の同意なく一方的に別居をすると、「同居義務違反」となってしまいます。


そうなると、離婚原因の一つである「悪意の遺棄」という認定がされてしまうことがあります。


悪意の遺棄とは、夫婦の義務である、同居・協力・扶助の義務を怠ることです。
悪意の遺棄と認められた場合、慰謝料の請求をされてしまう可能性もあります。


いきなり家を出てしまうようなことはせず、まずは奥様ときちんと話し合いをしましょう。
双方が薄々別居を望んでいるような状況であっても、後から一方的な別居だったと言われないように、きちんと話をしてから出ていく方が安全です。

 

ただし、一方的な別居であっても、DV被害などがある場合には同居義務違反の問題は起こりません。そのような場合は、一刻も早く身の安全を図ることが大切です。

 

2.別居中も婚姻費用を分担する必要がある
別居をすると、通常今までよりも生活費が余分にかかりますし、家事も各自でやることになります。
そのため、今まで通りの生活費を払うことに抵抗を感じるというお気持ちは理解できます。


ただし、別居中の夫婦であっても、婚姻費用を分担する義務があります。
相談者さんの収入と奥様の収入にもよりますが、相談者さんの収入のほうが高い場合は婚姻費用を払う義務がある可能性が高くなります。


婚姻費用をいくら払うべきかは、家庭裁判所が採用する算定表を利用することで、簡易な計算が可能です。
相談者さんの収入、奥様の収入、お子様の人数、年齢の情報により計算できるような仕組みになっています。


もし配偶者から婚姻費用分担調停を申し立てられた場合、この算定表通りの婚姻費用が認められる可能性が高くなります。

 

ただし、お互いが納得しているのであれば、婚姻費用を払わないと取り決めることも可能です。
いずれにせよ、別居する前に婚姻費用についてはきちんと話し合っておくことが大切です。


3.親権を望む場合、別居すると不利になる
お子様がいらっしゃるということですが、もし相談者さんが親権者になることを望んでいる場合、子供と別居すると親権争いで不利になってしまいます。


親権者を決めるときに、今の環境に問題がない場合には、子供の環境を変えずに今一緒に暮らしている親を親権者にする方がよいという考え方をされるためです。


元々親権については、母親の方がかなり有利というのが実情です。
相談者さんが子供の親権を取りたい場合には、子供を連れていく方が有利になりますが、勝手に子供を連れて出ていくことは「違法な連れ去り」とみなされる可能性もありますのでやめましょう。


離婚するまでどちらが子供と生活する監護者になるか決められない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて子供の監護者を決める方法もあります。


4.別居をすると、離婚成立まで長引くケースもある
別居によってお互いに余分なストレスを感じずに済むなどのメリットがありますが、かえって離婚成立まで長引くケースもあります。


上述したように、別居中も夫婦には婚姻費用を分担する義務があります。


そのため、婚姻費用を受け取る側は、婚姻費用をもらい続けるためにあえて別居のまま離婚せずにダラダラと長引かせようとするというケースも見受けられます。


最初は離婚に同意していた配偶者であっても、別居してから気が変わり、このまま離婚せずに別居生活を続けたいと考える可能性もあります。


離婚前の別居をする場合、ある程度タイムスケジュールを立てたうえで計画的に実行することをお勧めします。
当事者同士の話し合いが長引きそうな場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てるとよいでしょう。

 

5.別居するまでに財産の確認を
離婚するときには共有財産を分け合う財産分与をすることになります。
別居のために家を出る場合、財産の状況を把握することが難しくなります。


そうなると、配偶者が財産を隠してしまったり、勝手に処分してしまうというリスクもあります。
そのようなことを避けるために、別居前に財産の状況を把握し、証拠となる書類などは確保しておきましょう。

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離婚するときのペットについてのご相談

今回は、離婚時のペットに関するご相談です。

 

【ご相談】
私たち夫婦には子供はいませんが、ペットの犬を子供同然に大切にしてきました。
もうすぐ離婚することになりましたが、このペットについて相談させてください。
ペットは私が引き取りたいと思っておりますが、まだ夫ときちんとした話し合いはできていません。
この場合に、私が引き取ることをどのように主張すればよいでしょうか。また、ペットにかかる飼育費を夫に請求することはできますか?
エサ代、トリミング代、病院代、ペット保険代などで毎月5万円は軽く超えるため、できれば半分負担してもらいたいと考えています。

 

【アドバイス】
ペットは今や家族同然の大切な存在ですね。
私にできるアドバイスをさせて頂きます。

 

1.ペットは法律上は「モノ」の扱いになる
ペットを子供同然に可愛がっておられる相談者さんにとっては残酷かもしれませんが、ペットは法律上は「モノ」の扱いになります。
たとえば、ペットを奪った場合でも、「誘拐罪」にはならず、「窃盗罪」になることからもお分かりいただけるかと思います。

 

ペットは物であるため、結婚期間中に夫婦で飼い始めた場合には「共有財産」となり、財産分与の対象となります。
つまり、預貯金などと同じように、財産として分けることになるのです。
ペットの場合は、預金などと違って半分ずつにすることはできませんから、夫婦のどちらか片方が引き取ることになります。

 

なお、結婚前から夫婦のどちらかが飼育していたペットの場合には、財産分与の対象とはならず、もともと飼育していた人の所有物ということになります。

 

相談者さんのペットは結婚後に飼いはじめたということであれば、財産分与の話し合いでペットをどちらが引き取るか決めることになります。

 

結婚前から相談者さんが飼っていた場合には、話し合う必要もなく相談者さんが引き取ることができます。


万一、結婚前からご主人が飼っていた場合には、ご主人の所有物になりますので、ご主人が望まない限りは相談者さんが引き取ることはできません。

 

2.養育費のようなものはない
ペットは物として扱われ、子供と同様には法律上扱われません。
そのため、子供の養育費にあたるようなものは残念ながらペットにはありません。
相談者さんのペットのように毎月5万以上の飼育費がかかる場合でも、ペットが病気になって多額の治療費がかかった場合でも、引き取った人が一人で負担することが原則です。

 

ただし、これはあくまで法律上の根拠はないという話なので、当事者間でペットの飼育費を分担する契約をすることは問題ありません。
相手が拒否した場合には、法律上支払いを請求することはできないということです。

 

また、養育費がないことと同様、子供と離れて暮らす親が子供と面会する権利である「面会交流権」もペットの場合にはありません。
ただし、これもあくまで法律上の根拠はないということです。


たとえば、飼育費を一部支払ってもらうことを条件に、毎月ペットと面会させるという約束をすることも当事者間で合意すれば可能です。
そのような合意をした場合には、合意書などを作成し、合意内容を明確にしておきましょう。

相談者さんがご主人に飼育費を請求できるかどうかは、ご主人のペットに対する思い入れの程度によるところが大きいでしょう。

 

3.ペットをどちらが引き取るかの決め方
当事者同士の話し合いでどちらが引き取るかを決めるのが基本です。
その際、次のようなことをポイントにするとよいでしょう。

 

①飼育する時間があり、環境が整っているか
②飼育費を無理なく負担することができるか(高齢になり医療費が高額になった場合も問題ないか)
③ペットがどちらになついているのか
④これまで主にどちらが世話をしていたのか

 

ペットは法律上は物になりますが、どちらが引き取るかを考えるときには「子供」と同じように考えてあげるとよいのではないでしょうか。

 

ペットにとってどちらが飼育者として適しているのか、自分たちの感情だけではなく、客観的に判断することが大切です。

相談者さんがご主人に引き取ることを主張する場合にも、上記のポイントを踏まえて、ペットにとって相談者さんが引き取った方が幸せに過ごせることを説明するとよいのではないでしょうか。

 

大変失礼ですが、もし相談者さんがペットを一人で飼育する経済力がない等、ペットを飼育できる環境でない場合には、ご主人に譲るということも検討してみる必要があります。
子供と違って養育費を請求できない分、現実的に判断する必要があります。

 

どうしても双方が譲らず、自分が引き取りたい場合には、他の財産を多めに相手に譲るなどの交渉を考える必要があります。

相談者さんご夫婦のように子供同然にペットを可愛がってきた場合、当事者同士の話し合いが長引くことも多々あります。
当事者同士の話し合いで決められないときは、ほかの財産の場合と同様、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てることになります。

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面会交流についてのご相談

今回は、離婚後の面会交流についてのご相談です。

 

【ご相談】

夫と離婚することになり、子供の親権は私がとります。

養育費についても話し合いでなんとか合意することができました。

ただ、一つ問題が残っています。

離婚後に夫からは毎月子供に会いたいと言われていますが、私は会わせたくありません。

私に対するモラハラなどが原因で別れますので、もう夫との接点を持ちたくないのです。

夫に子供を会わせないとまずいのでしょうか?

 

【アドバイス】

離婚後にご主人と子供を会わせたくないとおっしゃる方は多いですね。

私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.面会交流の意義と決め方

離婚して子供と一緒に暮らさなくなる親には、子供と会ったり、電話や手紙などで連絡を取ったりして子供と交流する権利があります。

これは親にとっての権利であると同時に、子供にとっての権利でもあります。

親子であれば、交流したいと思うのは自然な感情です。

 

離婚する際、面会交流についてもしっかりと取り決めておくことで後日のトラブルを防止できます。

面会交流をさせるか否か、させる場合にはその方法、日時、場所、回数などについて具体的に決めておくことが大切です。

決めた内容は文書にして、双方の署名捺印をして残しておきましょう。

 

当事者間の話し合いで合意できない場合には、面会交流を求める親が家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

調停では、調停委員がそれぞれの当事者から話を聞いて、面会交流の可否や方法などについて助言や提案をしていきます。それにより当事者が納得する結論が導き出されれば、調停成立となります。

 

調停でも双方が合意できない場合には、審判の手続きに移行し、審判では裁判官が判断を下すことになります。

 

2.面会交流を拒否できるケース

面会交流は基本的には親と子の権利ですので、子供の親権者が拒否することは難しいです。

家庭裁判所も、現在は面会交流の重要性を認識しており、多くの場合面会交流は認められています。

 

ですが、例外的に拒否できるケースもあります。

それは、面会交流させることが「子供の福祉に反する場合」です。

そのような場合は、家庭裁判所も面会交流をさせない判断を下すことになります。

 

子供の福祉に反する場合というのは、子供にとって有害である場合のことです。

たとえば、子供に暴言や暴力をふるうような親と交流させることは、子供の身を危険にさらすことになります。

他にも、アルコール依存症や薬物中毒の親なども子供に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。

このような場合は、面会交流を拒否できるでしょう。

 

ご相談さんの場合は、妻へのモラハラがあったようですが、それだけで子供との面会交流を拒否することは難しいと考えられます。

 

次に、子供がある程度の年齢に達していて分別がある場合に、子供自身の意思で「会いたくない、交流したくない」という場合です。

ただ、これには注意が必要で、子供が本心から言っているのかはよく見極める必要があります。

子供は親に気を遣うことがあり、親が会わせたくないと思っていることを察して、会いたくないと言っている場合もあるからです。

 

ご相談者さんのお子さんの年齢がわかりませんが、子供の意見も聞いてみてください。

 

3.面会交流をさせるべき理由

離婚するほどの相手ですから、子供に面会交流をさせたくないと思う気持ちは理解できます。

ですが、子供の立場で考えたとき、本当に面会交流を妨げることが正しい選択なのかは冷静に考えてみましょう。

 

子供は両親の離婚で傷ついてしまうことがほとんどです。

子供の健全な育成を考えたとき、たとえ両親が離婚したとしても、両親双方からの愛情を感じられる環境はとても大切です。

面会交流を続けることで、たとえ両親が離婚しても、自分への愛情は変わらないと感じることができれば、子供の精神は安定するのではないでしょうか。

もし自分にとっては良い伴侶でなかったとしても、子供にとって悪い親とは限りません。

客観的に子供との関係性はよく見極めることが大切です。

 

また、面会交流の有無が養育費の問題に影響を与えることが多々あります。

養育費の取り決めをしていても、不払いになるケースはとても多いです。

特に、子供と面会交流していない親は不払いになりやすい傾向があります。

 

まったく交流のない子供に対し、同居していたころと同じように責任感や愛情を維持することができる親は多くはないのかもしれません。

 

定期的に面会交流を続けていれば、養育費を払っていないと子供に合わせる顔がない、という気持ちになることも想像がつくでしょう。

 

そのような意味でも、面会交流はできるだけさせるべきだと考えます。

 

■まとめ

面会交流は、基本的には拒否することは難しいものです。

子供の立場に立った時、面会交流させないことが本当に正しい選択なのかは冷静に判断しましょう。

また、養育費の不払い防止の効果を期待できるという意味でも、面会交流はできるかぎりさせてあげましょう。 

 

 

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養育費の計算についてのご相談

今回は、養育費の計算についてのご相談です。

 

【ご相談】

夫と離婚することが決まりましたが、養育費をどうするかで夫と意見がまとまりません。

6歳の息子と4歳の娘がおり、私が親権を取って育てていくことは決まっています。

私としては、子供一人につき月5万円で合計月10万円を払ってもらいたいと思っていますが、夫は一人につき3万円くらいが相場だから、合計月6万円までしか払えないと言っています。

どのように養育費を決めれば公平になりますか?

なお、私の年収は200万円程度、夫の年収は600万円程度で、お互い会社員です。

 

 

【アドバイス】

離婚が決まり、養育費について話し合いをされているのですね。

離婚成立前に養育費についてしっかり話し合いをすることはとても大切です。

では、私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.養育費の基本的な考え方

養育費は、子供が成熟するまで(基本的には20歳になるまで)の間、父と母で分担して負担するべきものです。

 

養育費を決めるルールは特になく、夫婦間で納得していれば自由に決めることができます。

養育費は、子供が離婚前と同水準の生活を送れるような内容にすることが理想です。

養育費は、「生活保持義務」に基づくものだからです。

生活保持義務とは、自分の生活と同じレベルの生活を保持させる義務のことです。

 

離婚前の子供の生活水準を考え、子供の衣食住にかかる費用、進学の予定、習い事など子供の養育にかかる費用全般を計算してみましょう。

そして、その金額を夫婦の収入などに応じて分担します。

 

たとえば、子供一人の養育に月9万円かかると考えた場合、その9万円を父と母の収入のバランスに応じて負担する金額を決めます。

 

父の収入が母の収入の2倍であれば、父6万、母3万の分担として、養育する母に対し、父が毎月6万円支払う、というように決めることもできます。

 

ご相談者さんの場合も、まず子供の養育にかかる月額を具体的に算定してみて、その金額をご主人と相談者さんの収入割合に応じて分担額を出してみてはいかがでしょうか。

 

ただし、これはあくまでも計算方法の一例であり、収入と養育費の分担割合を同じにしなければいけないという決まりがあるわけではありません。

 

2.養育費を計算するときの算定表

養育費は請求する側は高い金額を求め、支払う側は低い金額を求めることが普通で、お互いの利益が対立します。

そのため、当事者の意見だけで金額の折り合いをつけるのは難しいことが多いです。

 

そのような場合、家庭裁判所でも採用されている、養育費の算定表を用いて目安となる金額を調べてみましょう。目安となる金額がわかれば、話し合いがしやすくなります。

この方法であれば、お互いにある程度の公平感を感じられるのではないでしょうか。

 

算定表は、請求する側の年収と職業(自営業か会社員か)、支払う側の年収と職業、子供の人数と年齢を基にして計算します。

 

今は、この算定表に基づいて養育費を自動計算できるツールもありますので、それを使うとより簡単に養育費を算出できます。

 

ご相談者さんのケースで、自動計算ツールを活用して養育費を算定してみました。

 

ご相談者さんのケースでは、月8~10万円の養育費が相場ということになります。

ご相談者さんの求める一人5万円で合計10万円という金額は、相場から見ても妥当である可能性が高いでしょう。

ご主人が口にしていた相場は3万円というのは、年収などの条件を無視したものだと思われます。

 

ただ、ご主人の意見や事情もよく聞いてみる必要があります。

たとえば住宅ローンの有無などによっては、月々10万円の支払いが現実的でない場合も考えられます。

実現性の低い約束をしても、あまり意味がありません。

そのような場合は、お互いに歩み寄り、たとえば月8万円にするなども検討してみましょう。

 

ご主人には、子供の養育にかかる費用を具体的な根拠を説明したうえで、この算定結果を見せて話し合ってみてはいかがでしょうか。

 

3.話し合いで決められない場合 

算定表の金額を目安にしても双方またはどちらかが納得できず、このまま養育費の折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをすることになります。

 

調停では、家庭裁判所の調停委員が当事者の意見や事情を聞いて、養育費についての助言や提案をしていきます。そして、話し合いの結果双方が納得する結論が出れば調停成立となります。

 

ただ、調停になった場合でも、特殊な事情がない限り調停委員は基本的には算定表通りの金額を提案してくることがほとんどです。

 

それであれば、はじめから算定表にしたがって養育費を決める方がお互いにとって手間や時間をかけずに済むのではないでしょうか。

 

調停が不成立になった場合は、「審判」という手続きに移ります。

審判では、当事者が納得していない場合でも、裁判官が当事者の事情を考慮の上、判断を下すことになります。

審判の場合でも、算定表どおりの結果になることがほとんどです。

 

4.養育費が決まったら

養育費についての話し合いがまとまった場合、その合意内容を文書にすることが大切です。

養育費は、長期にわたって支払いが続くものなので、口約束では支払われなくなってしまうリスクがとても高いのです。

養育費が支払われなくなった場合に、証拠となる合意文書が必要となります。

 

文書には、次の点を具体的に記載しましょう。

①子供一人一人の養育費の金額・・・まとめていくらという書き方ではなく、具体的に、○○(子供の名前)に月いくら、というように一人一人について記載しましょう。

②養育費をいつまで支払うか(期間)

③養育費の支払い時期・支払い方法

④特別費の負担について・・・特別費とは、進学時の入学金など、不定期に発生する費用のことです。この費用をどうするかについても、できるだけ決めておくことが望ましいです。

 

文書は、できるかぎり「公正証書」で作成することをお勧めします。

公正証書は、公証役場という公的機関で作成され、保管されるもので、自分たちで作成した私文書よりも強力な証拠として認められます。

 

また、公正証書には「強制執行認諾文言」という、約束を破ったら強制執行することを認めます、という意味の文言を付けることができます。

これを付けることで、万一養育費の不払いが起きたとき、裁判を行わずに相手の財産を差し押さえることができます。

 

このため、公正証書を作っていれば、相手にとってはプレッシャーとなり、安易な気持ちで不払いとなることを防ぐ効果もあります。

 

■まとめ

養育費は生活水準などに合わせて自由に決めることができますが、お互いの意見が一致しない場合は算定表を目安にすると双方が納得しやすくなります。

 

仮に調停等の家庭裁判所の手続きになった場合でも、算定表通りの結論となる可能性が高くなります。

 

養育費が決まった場合、その合意内容を必ず文書にしましょう。

 

 

 

 

 

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