養育費の連帯保証人についてのご相談

今回は、養育費の連帯保証人についてのご相談です。

 

ご相談

もうすぐ夫と離婚する予定です。

子供が二人いて、私が親権者になります。

養育費について、相場通りの金額を子供たちが20歳になるまで払ってもらうという約束を夫としました。

ただ、夫はいい加減な性格で金銭的にルーズなところがあります。

養育費をきちんと払い続けてくれるのかとても心配です。

夫の両親は常識があり経済的にも余裕があるので、夫の両親に養育費の連帯保証人になってもらいたいと思っています。養育費の支払いについて連帯保証人をつけることに問題はありますか?

 

アドバイス

養育費をきちんと払い続けてもらえるかは心配ですよね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

養育費に連帯保証人をつけることは可能

養育費に保証人をつけることについて、特に禁止されているわけではありません。

保証人になることを連帯保証人本人と養育費の支払い義務者が同意していれば、連帯保証人をつけることは可能です。

連帯保証人をつけるには、連帯保証人の同意書をとりつける必要があります。

 

ただし、養育費というのは、扶養義務のある親だからこそ支払う義務があるものです。支払い義務者本人が死亡した場合、養育費の支払い債務は消滅することになり、連帯保証人に支払いを請求することはできません。

 

公正証書を作ることは難しい

養育費に連帯保証人をつける場合、後で強制執行をすることなどを考えると公正証書を作成したいと考えるのではないでしょうか。

ただし、公証役場では、養育費に連帯保証人をつけることを認めてもらえない可能性が高いでしょう。

 

養育費について連帯保証人をつけることは、法的な争いになった時の判断が難しいからです。このような争いの元になる可能性が高い内容を公正証書に盛り込むことはなかなか認めてもらえないのです。

 

連帯保証人以外の対策も考える

養育費に連帯保証人をつけることはできないわけではないものの、一般的な方法ではなく、公正証書にすることも難しいことから、養育費の不払いを防ぐベストな対策とは限りません。

他の方法についても検討することをおすすめします。

 

公正証書の作成

養育費の不払いを防ぐ有効な対策としては、公正証書を作成し、不払いが起きたら強制執行ができる旨の文言をつけることです。

自分たちで作成した離婚協議書に養育費について記載した場合には、相手が養育費を払わなくなった時裁判手続きをしなければ相手の財産を差し押さえることはできません。公正証書の場合には、裁判手続きを経ることなく財産の差し押さえができます。

 

自分たちで作成した離婚協議書に連帯保証人をつけるよりも、連帯保証人なしでも公正証書を作成する方がいざというとき役に立つのではないでしょうか。

 

一括払い

相手にまとまったお金がある場合には、養育費を一括払いしてもらう方法もあります。

養育費は毎月一回支払う方法が一般的ですが、支払い方法に決まりがあるわけではなく、一括払いとすることも可能です。

一括払いであれば、途中で不払いになるリスクがないため、受け取る側にとっては安心できる方法です。

ただし、相手にとってもメリットがなければ簡単に応じてくれる可能性は低いでしょう。

一括払いとする場合には、分割払いの総額よりも養育費を減額することが一般的です。

たとえば、毎月5万円の養育費をこれから10年間支払うという場合、養育費の総額は600万円となりますが、一括払いとするのであれば500万円とするといった方法です。

相談者さんのように夫の両親が裕福という場合には、夫が親からお金を借りて養育費を一括払いするという方法もあります。

 

まとめ

養育費の支払いに連帯保証人をつけることは不可能ではありませんが、公正証書にすることが難しいため必ずしも有効な方法とは言い切れません。

公正証書を作成することや一括払いの方法など、他の対策についても検討したうえで、ベストな方法を選択してくださいね。

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浪費と財産分与の割合についてのご相談

今回は、相手が浪費していた場合の財産分与の割合についてのご相談です。

 

ご相談

夫と離婚の話を進めています。

お互いに色々言い分はありますが、不倫などが原因ではないため慰謝料はなしというところまでは話し合いました。

現在、財産分与について揉めています。

我が家は共働きで生活費を出し合っていたのですが、夫は浪費家なので貯金がほとんどありません。

私は生活費を出した残りをほとんど貯金していたので、ある程度まとまった貯金があります。

夫は私のこの貯金は財産分与で半分ずつ分けるのが当然だというのですが、私は納得ができません。

このような場合でも、財産分与は2分の1ずつとしなければいけないのでしょうか。

 

アドバイス

浪費家の配偶者がいる場合に、財産分与で2分の1ずつ財産を分けることには納得できませんよね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 財産分与の原則は2分の1ずつ分ける

財産分与の割合については、夫婦での話し合いによって自由に決めることができますが、特別な事情がない限りは2分の1ずつ分けるのが原則です。

 

配偶者が浪費家で、財産の形成に貢献していない場合には、相手にその理由を伝えて自分の取得する財産の割合を高くするように交渉することになります。

 

相手がそれに応じない場合には、家庭裁判所に財産分与調停を申し立てることになるでしょう。

調停では、調停委員を介して財産分与について当事者の意見を調整していき、合意することを目指します。

 

自分が望む財産分与割合やその根拠について、調停委員の理解を得られるように主張するとよいでしょう。

ただし、最終的に当事者同士が合意しなければ、調停は不成立となって終了してしまいます。

調停が不成立となった場合、自動的に審判の手続きが開始します。

審判は、裁判官が必要な審理を行ったうえで、一切の事情を考慮の上財産分与について決定します。

 裁判所が財産分与割合を2分の1ずつにしない場合

裁判所はどのようなケースで、財産分与割合を2分の1ずつではない割合にするのでしょうか。

財産の形成における夫婦の貢献度に大きな偏りがあると認められる場合には、2分の1ずつではない割合が認められる可能性があります。

たとえば、スポーツ選手など、夫婦の片方の特殊な才能により多額の資産を形成した場合には、半分ずつ分けるのは不公平だと判断されることがあります。

 

浪費については、何をもって浪費とするかの基準が不明確で、証明することが難しいのが実情です。

家計に影響を与えない範囲で趣味にお金を使ったり欲しいものを買うことは、浪費と認められるとは限りません。

相談者さんのように、ご主人が必要な生活費は負担したうえで、残りのお金を自由に使ってしまい貯金がないようなケースであっても、裁判所がどのように判断するかは残念ながらわかりません。

 

今できる対策

財産分与の対策として、今できることについて紹介します。

①離婚まで長引きそうなら別居を検討

財産分与は、別居するまでに築いた財産を対象とすることが原則です。

別居後に形成した財産は、夫婦で協力して築いた財産と考えれらないからです。

相談者さんがご主人と一緒に暮らしている限り、今から相談者さんが貯めたお金についても財産分与の対象となってしまいます。

これ以上自分の財産を相手に渡さないようにするためには、離婚成立まで長引きそうであれば別居を検討するのも選択肢の一つです。

 

②相手が財産隠しをしていないか確認する

離婚を意識すると、財産分与の対策として自分の財産隠しを画策する人もいます。

相手が貯金はないと言っていても、実際には秘密の口座を作っていて財産を隠し持っているような可能性もあります。

相手が不自然に給与口座からお金を引き出していないかなど、確認した方がよいでしょう。

 

③相手が浪費についての証拠をそろえる

相手との話し合いや調停の際、相手が浪費した内容や時期について、できるだけ具体的に主張することが有効です。

相手が浪費した内容がわかる証拠をできるだけ揃えましょう。

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子供の連れ出しに関するご相談

今回は、子供を連れて妻が一方的に家を出て行ってしまった方からのご相談です。

 

ご相談

夫婦関係が悪化して喧嘩が絶えなくなり、離婚の話も出ている状況の中、妻が子供を連れて出ていき、一方的に別居を始めました。

妻にはメール等で連絡して子供を連れて戻ってくるように呼びかけましたが、返事はありません。

 子供は小学生二人で、妻の実家で生活しているようです。

このように一方的に子供を連れて出ていくことに問題はないのでしょうか。

子供を連れ戻す方法や、今から私にできる対応策があれば教えてください。

 

アドバイス

突然奥様が子供を連れて出て行ってしまい、さぞ困惑されていることと思います。

私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

一方的に子供を連れて出ていくと違法と解釈されることもある

たとえ自分の子供であっても、勝手に連れて出ていってしまうと「違法な連れ去り」と判断される可能性があります。悪質なケースでは、「未成年者略取罪」という犯罪になる可能性もあります。

 

違法な連れ去りと判断される可能性が高い事例

・学校や幼稚園から子供を無断で連れ出した。

・子供を待ち伏せして無断で連れ出した。

 

違法ではないと判断される可能性が高い事例

・子供を虐待から守るために無断で連れ出した。

・自分がDV被害に遭っており、無断で子供と一緒に家を出た。

 

子供を連れ戻す方法

子供を連れ戻すためにはどのような方法があるでしょうか。

相手が勝手に子供を連れだしたのだから、自分も子供を無断で連れ戻したいと考えるかもしれませんが、それは基本的には認められません。

 

監護者指定及び子の引渡審判の申し立てを行う

 

子供を連れ戻すための方法として、家庭裁判所に監護者指定と子の引渡審判の申し立てを行う方法があります。

監護者というのは、子供と一緒に暮らして世話をする人のことです。

ただし、この申し立てをしても必ず監護者として自分が指定され、子の引渡が認められるわけではありません。

また、裁判所の手続きなので結論が出るまでには時間がかかります。

 

子供の監護権者の指定や引渡の審判においてポイントとなることを紹介します。自分に勝算があるかを考えたうえで、申し立てを検討してはいかがでしょうか。

 

①連れ出した時の状況

別居の開始と同時に子供を連れて出て言った場合、後から子供を連れだした場合よりも子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。

これは、後から強引に連れ出した状況とは異なり、穏やかな形で子供を連れて行ったと考えられるからです。

 

②主に養育していたのがどちらか

子供を連れだした親が、別居前から主に子供の世話をしていた場合には、子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。

主な養育者だった親が別居するときに子供を置いていくと、子供の世話が適切に行われない可能性があり、かえって子供に不利益があると考えられるからです。

多くの家庭では母親が主な養育者となっているため、母親による連れ出しが行われた場合に、父親への引渡しが認められる可能性が低いという現実があります。

 

③現在の子供の養育環境

連れ出された子供の現在の養育環境に問題がなければ、子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。

衣食住に問題のない環境で、これまで通りきちんと学校に通い平穏な生活を送っている場合には、子供の環境を変える必要はないと判断されるため、子供を引き渡す必要性が認められないからです。

 

④引き渡し後の養育環境

子の引渡しを実現した場合に、子供を適切に養育できる環境が整っていなければ、子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。

現実的に子供を自分が養育できる環境ではない場合には、申し立てをしても無駄になってしまう可能性が高いでしょう。

 

まとめ

相談者さんの状況で、元々奥様が主に子供の世話をしていた場合には、連れ戻しをするのは難しいと言わざるを得ません。

ですが、その場合でも、子供との面会を求めることは続けた方がよいでしょう。

可能性が低いからと子供との接触を諦めてしまうと、親権争いの際にも不利になってしまいます。難しい状況ではありますが、できるだけ子供とコミュニケーションを取れるように働きかけてみてはいかがでしょうか。

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水商売の女性への慰謝料請求のご相談

今回は、水商売の女性への慰謝料請求についてのご相談です。

 

ご相談

夫が不倫をしており、離婚を考えています。

現在夫にばれないように不倫の証拠を集めているところですが、夫の不倫相手はキャバクラで働いている女性のようです。

夫に慰謝料請求をすることはもちろんですが、相手の女性に対しても慰謝料請求をしたいと考えています。

相手がキャバクラ嬢の場合、色恋営業のようなものがあると思いますが、その場合でも慰謝料請求は可能でしょうか?

 

アドバイス

ご主人の不倫のことを知り、つらいお気持ちでいらっしゃることと思います。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

水商売の女性が相手でも慰謝料請求は可能

キャバクラやクラブに勤める水商売の女性が相手であっても、不貞行為の事実があれば慰謝料請求をすることはできます。

 

実際に、平成28年の判決で銀座のクラブホステスへの慰謝料請求が認められているため概要を紹介します。

 

判例の概要

銀座のクラブホステスが客である夫とホテルに宿泊したことに対し、妻が不貞行為の慰謝料請求をしました。

ホステス側は、営業活動の一環としてホテルに宿泊しただけで不貞行為はないと主張しました。

裁判所は、同伴出勤等は営業活動の一環として認められるが、ホテルに宿泊することは営業活動とは通常考えられず、ホテルに二人で宿泊したことは肉体関係があったことを推認させるとして、妻の慰謝料請求を認めました。

 

この判例からもわかるように、不貞行為の事実が認められる場合には不貞相手が水商売の女性であっても慰謝料請求が認められる可能性が高いでしょう。

 

ただし、古い判例では水商売女性によるいわゆる「枕営業」の場合に、不貞行為とは認定せずに慰謝料請求が認められなかった事例もあるため、画一的な取り扱いがされているわけではありません。

 

離婚慰謝料は不貞相手には請求できない

不貞行為による慰謝料については、不貞行為そのものに対する慰謝料請求と、不貞行為が原因で離婚となった場合の離婚慰謝料があります。

 

不貞相手の女性に請求できるのは、あくまで不貞行為そのものに対する慰謝料請求で、離婚慰謝料までは請求することができません。

離婚するかどうかは夫婦が決めることであるため、離婚についての慰謝料を不貞相手にまで請求することは適当でないというのが裁判所の判断のようです。

 

離婚慰謝料は不貞慰謝料よりも高額となることが一般的ですが、離婚慰謝料を請求できる相手は配偶者だけであり、不貞相手に対しては請求することは難しいでしょう。

 

今回相談者さんは離婚も考えているということですが、離婚についての慰謝料を不貞相手に請求することはできませんので、注意が必要です。

 

配偶者と不貞相手から二重に慰謝料を受け取ることができるわけではない

時々、不貞相手と配偶者の両方に慰謝料請求をすることで、2倍の慰謝料が受け取れると考えている方がいらっしゃいますが、基本的にそれは認められません。

不貞行為は、配偶者と不貞相手が二人で共同して不法行為を行ったものとして扱われます。

そして、共同不法行為を行った二人は、連帯して慰謝料を支払う義務を負うことになります。

たとえば、不貞行為の慰謝料が200万円と認定された場合に、二人に対して200万円を請求することができますが、受け取ることができる金額は合わせて200万円ということになります。

200万円の内訳が、100%配偶者からであっても不貞相手からであってもかまいませんし、それぞれから100万円ずつとすることもできますが、200万円を受け取った時点でそれ以上請求することはできません。

 

まとめ

不貞相手が水商売の女性であっても、基本的に慰謝料の請求は可能です。

しっかりと証拠をそろえて相手が言い逃れできないようにしたうえで、不貞相手に対しても慰謝料請求をするとよいのではないでしょうか。

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離婚後の不貞行為の慰謝料請求についてのご相談

今回は、離婚後に元夫の不倫が判明した女性からのご相談です。

 

ご相談

半年前に離婚をして二人の子供を育てているシングルマザーです。

夫婦で性格が合わずに喧嘩が多くなったことなどから、協議離婚をしました。

協議離婚をしたときに、離婚協議書を作り、養育費や財産分与などについて取り決め、慰謝料は双方なしということで合意しました。

ところが、最近になり、実は夫が離婚前に不倫をしていたことがわかりました。

慰謝料なしの合意をしてしまいましたが、その時は不倫のことを知らなかったので、今からでも慰謝料の請求はできるのでしょうか?

 

アドバイス

離婚後に相手が不倫していたことが判明するとショックですね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

離婚するときに「慰謝料なし」という合意をしている場合に、実は相手が離婚前に不倫をしていたと判明するケースは時々あるようです。

このような場合、後から慰謝料を請求することはできるでしょうか。

 

慰謝料なしの合意をしている場合でも請求できる可能性はある

離婚後であっても、時効になっていなければ慰謝料請求をすることはできます。

ただし、「慰謝料なしの合意」をしている場合には、請求することは基本的に認められません。

合意した内容にはお互いが拘束されることになるので、一方的に合意内容を取り消すことは基本的にできないからです。

 

ただし、今回のご相談のように、合意する前提としての事実(お互いに有責事由がない)が異なっている場合(実際には不貞行為があった)には、合意内容が無効となり、慰謝料請求が認められた判例があります。

 

判例の内容

夫が不貞行為を行っており、不貞相手を妊娠させていたにもかかわらず、その事実を知らなかった妻と慰謝料なしの離婚協議書を作成した。

離婚後にその事実を知った元妻が、錯誤があったため離婚協議は無効であると主張し、それが認められ妻からの慰謝料請求が認められた。

 

 

証拠の必要性

この判例からもわかるように、不貞行為の事実を知らずに慰謝料請求をしない旨の合意をした場合には、後から慰謝料請求が認められる可能性があります。

ただし、慰謝料を請求するためには、基本的に証拠が必要です。

 

この判例の場合には、不貞相手が妊娠していることから不貞行為の事実や時期の証明をすることができたのだと考えられますが、通常離婚前に不貞行為があったことを証明するのは難しいケースが多いと考えられます。

 

今回、相談者さんがどのような経緯で元夫が離婚前に不倫していたことを知ったのかはわかりませんが、それを証明できる証拠が必要です。

 

証拠は、単に不倫相手と親密な関係だったことだけでなく、実際に肉体関係があったことまで証明する必要があります。

  

離婚原因ではないため高額な慰謝料請求は難しい

今回、相談者さんご夫婦は「性格が合わずに喧嘩が多くなった」ことから離婚したということなので、性格の不一致による離婚だと考えられます。

そのため、元夫が離婚前に不倫をしていた場合でも、それが離婚原因となることはないでしょう。

 

不貞行為による慰謝料は、離婚原因となった場合とそうでない場合とでは、評価が異なります。離婚原因となった場合の方が慰謝料は高額となることが一般的です。

 

そのため、仮に慰謝料請求が認められた場合でも、想像よりも低額の慰謝料しか認められない可能性もあるので、注意が必要です。

 

まとめ

不倫の事実を知らずに慰謝料なしの合意をして離婚した場合、証拠があれば後から慰謝料請求が認められる可能性はあります。

ただし、慰謝料請求が認められない可能性や、低額しか認められない可能性も高く、過度な期待は禁物です。

まずは元夫に対し、不貞行為の事実を知ったことにより慰謝料請求を考えていることを伝え、話し合いをするとよいのではないでしょうか。

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子供名義の預金と財産分与に関するご相談

今回は、子供名義の預金が財産分与の対象になるかについてのご相談です。

相談内容

妻と離婚することが決まり、財産分与についての話し合いをしています。

結婚後の預金は私名義でも妻名義でも財産分与の対象になるということは理解しており、お互いに開示しました。

それ以外に子供名義の預金があるのですが、財産分与の対象となるのでしょうか。

私たちには小学生の子供が二人いて、子供達の名義で10年ほど積み立てた預金が数百万円あります。

離婚後は妻が親権者になるので、子供名義の預金も実質的に妻が管理することになり、何となく納得がいきません。

 

アドバイス

 子供名義の預金が財産分与の対象になるのかは、気になるところですね。私にできるアドバイスをさせて頂きます。

 

子供名義の預金については、明確な決まりがあるわけではないものの、お金の出所や性質によって財産分与の対象となる場合とならない場合があります。

 

財産分与の対象となる共有財産は、夫婦が結婚期間中に協力して築いた財産です。

そして、財産の名義が子供の場合でも、実質的には夫婦の財産と考えられる場合には、財産分与の対象となります。

 

財産分与の対象となるかどうかのポイントは、以下の通りです。

 

ポイント①お金の出所

まずは預貯金の原資がどうなっているかがポイントです。

 

結婚期間中に夫婦が得た収入を貯金した場合には、その貯金は共有財産となり財産分与の対象となります。

そのため、夫婦の収入を原資として子供名義で預金した場合には、その預金も財産分与の対象とすることが基本です。

 

子供がアルバイトして貯めたお金や、祖父母が孫に贈与したお金などは、子供の固有財産となるため財産分与の対象とはなりません。

 

なお、児童手当を子供名義で貯めていた場合にも、財産分与の対象となる可能性は高いでしょう。

 

相談者さんの場合、子供の名義で夫婦の収入から毎月積み立てた預金のようなので、財産分与の対象となる可能性が高くなります。

 

ポイント②子供の年齢

子供が自分で預貯金を管理できる年齢になっている場合には、子供の預貯金は子供自身の固有財産として扱い、財産分与の対象とはしないケースが多くなります。

そのため、子供の年齢が高くなればなるほど、子供自身の財産として扱われる可能性が高くなります。

 

ポイント③預貯金の額

預貯金の金額が高額である場合には、財産分与の対象となる可能性が高くなります。

相談者さんの場合、数百万円の預貯金ということで、小学生の子供が自由に管理、処分するにしては高額であるため、子供の固有財産とは判断されずに財産分与の対象となる可能性が高くなります。

 

ポイント④財産分与の対象から外すべき事情の有無

子供の養育に通常よりもお金がかかる事情がある場合や、養育費が低額の場合などは、子供の預貯金を財産分与の対象外とする可能性が高くなります。

たとえば子供に障害があり自立することが難しいケースや、非監護者の収入が低くて養育費が低額というケースなどが考えられます。

 

ポイント⑤子供に贈与されたものではないか

夫婦の収入から子供名義で預貯金した場合でも、それが子供に対する贈与されたものと判断される場合には、子供の固有財産となり財産分与の対象とはなりません。

子供がお小遣いやお年玉を貯めた場合には、そのお金は子供に対して贈与されたものと考えられるので、子供自身の財産として扱われ、財産分与の対象とはなりません。

 

まとめ

相談内容だけで判断する限り、相談者さんのお子様名義の預貯金は財産分与の対象となる可能性が高くなります。

ただし、これはそれぞれの事情によって夫婦間の話し合いで判断すべきものなので、相手の意見も聞いて双方納得のいく結論を出すことが大切です。

口座内にお年玉やお小遣い、親が積み立てたお金など複数の内容のものが含まれているケースも多いため、まずは通帳の取引明細を確認するとよいでしょう。

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離婚原因が相手にあることの証明についてのご相談

今回は、相手が原因で離婚した場合の証明についてのご相談です。

 ご相談


夫の不貞が原因で離婚しようと思っています。不貞については夫も認めており、離婚には同意していて、今は条件について話し合っているところです。
離婚した場合に、離婚原因が夫にあったことを証明することはできるのでしょうか。
年齢的にいずれ再婚を考える可能性があるので、そのときに離婚原因が自分ではなく夫にあったことを明らかにしたいです。

 

アドバイス


相手が離婚原因を作った場合には、そのことをはっきりさせておきたいですよね。私にできるアドバイスをさせて頂きます。

 

1.慰謝料について取り決め、公正証書を作成する

 

相手の不貞行為が原因で離婚する場合には、高額でなくてもよいので慰謝料を受け取るようにしましょう。
そして、慰謝料について取り決めた内容は必ず文書にして、双方の署名捺印をしましょう。
公正証書で作成するのがベストです。

 

公正証書は、公証役場という公的な機関で作成する文書です。公証人の前で当事者同士が内容を確認し、認めたうえで、最後に書類に署名捺印をします。


公証人は、当事者の本人確認と文書の内容の確認を行ったうえで文書を完成させるため、本人たちが間違いなく公正証書に書かれた内容を認めたことになります。
そのため、公正証書に書かれた内容は、証拠能力や信用性が高くなります。
公正証書の原本は公証役場に保管されるため、万一紛失しても安心です。


2.慰謝料は、夫と不貞相手の両方に請求できる

 

慰謝料については、配偶者と不貞相手の両方に請求するとよいでしょう。
ただし、二人に請求すれば二倍もらえるというわけではなく、配偶者と不貞相手は連帯債務者になって、二人で慰謝料を分担して支払うのが普通です。

 

たとえば、不貞行為の慰謝料を200万円と考えている場合、この200万円について配偶者と不貞相手は連帯債務を負っていることとなり、あなたは200万全額を配偶者に請求することも、不貞相手だけに請求することも可能です。

 

夫については、離婚協議の内容の一部として慰謝料について盛り込んだ公正証書を作成することになります。

文面には、単に慰謝料いくらを支払う、というだけでなく、「不貞行為による慰謝料としていくら払う」と記載するほうがよいでしょう。

 

離婚する場合、慰謝料と財産分与を分けて考えずに、両方をまとめた形でいくら支払う、としてしまうケースもありますが、そうすると相手が離婚原因を作ったことが明確になりません。

あくまでも財産分与と慰謝料は別々のものとして考え、それぞれについて金額等を決めましょう。

 

一括での支払いが困難な場合には、分割払いの方法を取り決めることもあります。
分割払いの場合には、途中で不払いになることを防ぐため、必ず公正証書を作成しましょう。万一不払いになった場合に、すぐに強制執行を申し立てることができます。

 

3.不貞相手とは示談書を作成する

 

不貞相手とは、慰謝料について取り決めた示談書を作成するとよいでしょう。こちらについても可能であれば公正証書を作成しましょう。


示談書には、夫との不貞行為があった事実を認めること、それによる精神的苦痛や夫婦関係を破壊させたことに対する慰謝料の支払い義務を認めることを記載しましょう。

 

ただし、不貞相手との示談書や夫との離婚協議書については、むやみに人に見せるべきものではありません。
示談書には、この件を第三者に一切公表しないことを約束する秘密保持条項を付ける場合もあり、その場合は当然約束を守らなければなりません。


むやみに公表すると、場合によっては名誉棄損などの犯罪になってしまう可能性や、慰謝料請求をされてしまう可能性もあります。

これらの書類はあくまでもお守りのようなものとして、いざというときに自分の潔白を証明できるものという程度に考えておきましょう。

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有責者からの離婚請求についてのご相談

今回は、自分が有責者の場合に離婚したいというご相談です。


ご相談


私は不倫をしてそれが妻にばれてしまいました。
私としては、すでに夫婦関係はずっと前から冷え切っていることもあり、このまま離婚したいと思っています。
有責者からの離婚請求は認められないと聞きましたが、やはり私から離婚を請求することはできないのでしょうか。
妻に離婚したいことをやんわり伝えたことはありますが、はっきりした返答はありませんでした。
私としては調停や裁判になってでも離婚したいです。

 

アドバイス


有責配偶者からの離婚請求が認められるかは気になるところですね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.離婚裁判では、法定離婚事由がなければ離婚できない。


相談者さんは、調停や裁判になってでも離婚したいとのことです。
まず、調停については、話し合いの場が家庭裁判所になって調停委員が介入することになるものの、基本的に当事者間の話し合いとなります。
相手が合意してくれない限り、離婚することはできません。
ただ、相手が合意してくれるのであればどんな理由であっても離婚は可能です。

 

調停が不成立となり、離婚裁判をする場合には離婚できる原因が限定されます。
「法定離婚事由」のどれかに該当することが必要です。
法定離婚事由の中には、「不貞行為」があります。
今回相談者さんは自身が不貞行為を行ったということで、法定離婚事由に該当しているかのように見えます。

 

ですが、これはあくまで不貞行為をされた側からの訴えによる場合に認められるものです。
基本的に、不貞行為をした本人から不貞行為を理由とした離婚請求は認められません。

 

そうなると、それ以外の法定離婚事由があるかどうかが問題となります。
相談者さんの書かれている、「夫婦関係はずっと前から冷え切っている」というのがどのような状況かわかりませんが、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する場合には離婚が認められる可能性があります。

 

ただし、この離婚事由が認められるには、通常は長期間別居しているなどと言った客観的にみて夫婦関係が破たんしているとみなされるような状況であることが求められます。

「夫婦関係はずっと前から冷え切っている」と思っているのは、相談者さんだけという可能性もあります。特に、不貞行為を行った有責配偶者である相談者さんからの離婚請求が認められるのは、とてもハードルが高いのが実情です。
裁判をしても離婚が成立する可能性は低いでしょう。

 

2.離婚を望むなら、相手との条件交渉が現実的


では、どうしても離婚したい場合はどうすればよいでしょうか。
このような場合、現実的な方法として、相手の望む条件をできるだけ受け入れ、相手に有利な条件での離婚を協議や調停によって成立させるのがよいでしょう。

 

相手の性格にもよりますが、相手からの愛情が冷めている状態での結婚生活を継続させるよりは、自分の希望条件がかなうのであれば離婚に応じようと考える人が多いでしょう。

 

相手が離婚を拒否する場合には、なぜ離婚したくないのかを冷静に尋ねましょう。
金銭的な不安がある場合や、子供が卒業するまでは待ってほしいなどというケースも多いので、それであればその問題を解消するような提案をしてみましょう。

 

離婚をする際には、様々な条件を決めることになります。
財産分与、慰謝料、親権、養育費などについて取り決める必要があります。相手の希望に耳を傾け、できるだけ沿うような内容にしましょう。

 

けんか腰の態度だと、相手も頑なな態度になってしまうことも多いので、できるだけ冷静な話し合いをすることが大切です。

 

なお、一方的に別居を続ければ離婚が認められると考える人もいますが、あまりおすすめできません。一方的な別居は「悪意の遺棄」と認定されることがあり、ますます自分の有責度が高くなります。場合によっては慰謝料が高額になったり、離婚請求においても不利になる可能性があります。

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財産分与(将来の退職金)についてのご相談

今回は、将来の退職金を財産分与で請求できるかについてのご相談です。

 

ご相談


もうすぐ夫と離婚予定の40代女性です。性格の不一致による離婚なので、お互い慰謝料は無しということは納得しています。
今は財産分与について話し合いをしているところです。夫は大企業勤務で将来それなりの退職金をもらえる見込みですが、退職金を財産分与で請求することはできますか?夫は50歳なので、退職金がもらえるのは10年程度先になる見込みですが、それまで会社を辞めることはないと思います。

 アドバイス


まだ支払われていない退職金を財産分与で請求できるかは、気になるところですね。
私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.将来の退職金を財産分与で請求できるのか


将来支給予定の退職金を財産分与で請求できるかは、ケースによって異なります。
財産分与の対象財産と認められるためには、いくつかのポイントがあります。

 
①会社の就業規則などで、退職金が支給されることになっているのか。


そもそも会社に退職金制度があるかどうかですが、この点は今回のご相談のケースでは問題ないかと思います。

 
②会社の経営状況に問題がないか。


会社の経営状況が悪化して最悪倒産してしまった場合、退職金は支給されません。
そのため、会社の経営状況も退職金の支給見込みの判断材料となり、支給される見込みが低ければ財産分与の対象とするべきではありません。

 

③退職金がもらえるまで勤務する見込みが高いか。


退職金制度のある会社であっても、勤続年数が短かったり途中で退職する可能性が高い場合には、退職金が支給されなかったり、支給されるとしても少額しか支給されない可能性があります。そのような場合には、退職金を財産分与の対象とすべきでないとされたり、対象となる退職金を低く計算したりすることがあります。

ご相談のケースでは、定年退職まで勤務見込みということなので、この点は問題ないかと思います。

 
④支払いまでの期間がどの程度あるか。


退職金が支払われるまでの期間が10年以上あるような場合だと、途中で辞めてしまう可能性や経営状況や退職金制度が変わる可能性なども高くなり、退職金の見込みの蓋然性が低くなってきます。そのため、支払いまでの期間が長くなるほど退職金を財産分与の対象とできる可能性が低くなります。

今回のご相談のケースでは、約10年後の支払いとのことなので、相手が任意で応じてくれない限り、財産分与として請求するのは難しい可能性が高くなります。

 2.財産分与の対象とする場合の計算方法


財産分与の対象とする場合の計算方法は明確に決まっているわけではありませんが、一つの例として紹介します。

①定年退職時の退職金の見込み金額を算出する。(大手企業ということなので、役職ごとの見込み退職金額がある程度わかるかと思います。)
②その見込み退職金額から、結婚前と別居後の勤務分を差し引きます。

(例)
退職金見込み額 2000万円
22歳から60歳まで勤務
28歳で結婚、50歳で別居、離婚

2000万円×22(結婚年数)/38(勤続年数)=約1158万円
この1158万円からさらに、将来もらうはずのものを今受け取ることによる利息を控除します。
この例の場合には、将来の退職金のうち、1150万円程度を財産分与の対象とすることが考えられます。

 

 

 

まとめ

今回のご相談のケースで退職金を財産分与の対象として請求できるかどうかは微妙なところです。ただし、相手が任意で支払ってくれるのであれば問題ありません。相手との話し合いの中で、将来の退職金を財産分与の対象にするケースもあることを伝えたうえで、お互い歩み寄りができないかを探り合っていってはいかがでしょうか。

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面会交流についてのご相談

今回は、面会交流の約束を実現する方法についてのご相談です。

 

ご相談

現在、妻と離婚協議をしているところです。子供が二人いますが、私一人で子育てすることは現実的でなく、親権については妻に譲るしかないと考えています。
ただ、毎月の子供たちとの面会交流を実施することを条件にしたいと思っています。


妻も現時点では、面会交流には応じると言っていますが、これまでの妻の言動を考えると約束を本当に守るのか不安を感じています。
妻に約束を守らせるための対策はありますか?また、約束を破った場合に強制する方法はありますか?

 

アドバイス

親権を譲る代わりに面会交流の実施を求めるのは、親として自然なことですね。
私にできるアドバイスをさせて頂きます。

1.面会交流は子供にとっての権利でもあり、拒否は原則不可

面会交流は、親にとっての権利であると同時に、子供にとっての権利でもあります。
親の勝手な都合で面会交流を拒否することは、原則的に認められません。
ただし、面会交流させることで子供に悪影響があるような場合には、拒否することが認められることがあります。

 2.面会交流の約束不履行を防ぐには、離婚時に公正証書で取り決めを行う

面会交流の約束不履行を防ぐには、養育費の話と併せて面会交流についてしっかりと取り決めを行いましょう。離婚協議書は公正証書で作成しその中に面会交流についても記載することが大切です。
内容は、できるだけ具体的に定めておくほうがよいでしょう。以下の内容などについて、きちんと取り決めておきましょう。


①面会交流の方法(直接会う、電話、メール、手紙など)
②面会日や時間
③面会の頻度
④面会する場所
⑤送迎方法
⑥交通費をどうするか

 

公正証書を作成する場合、基本的に当事者双方が公証役場に出向き、公証人の前で約束内容を確認の上、書類に署名捺印をします。

そのため、当事者間で作った離婚協議書以上に心理的なプレッシャーを感じることが多く、約束を守る可能性が高くなります。

ただし、たとえば養育費などの金銭的な請求権については、「約束を破ったら強制執行に服する」という旨の文言を付けることができますが、面会交流についてはそのような文言を付けることはできません。

 

3.約束を破られた場合

面会交流の約束を相手が守らない場合の対応としては、まずは面会交流調停の申し立てをすることが考えられます。

相手が約束を守らないからといって、自力で勝手に子供を連れだすようなことは絶対にやめましょう。場合によっては、未成年者略取・誘拐などの罪に問われる可能性があります。

調停による話し合いをしても不成立となった場合、自動的に審判の手続きに移行します。そこで家庭裁判所が面会交流を認める決定を出してもらうことで、面会交流の権利があることを確定してもらうことができます。

 

 4.調停や審判の決定にも相手が従わない場合

調停や審判で面会交流が決定したにもかかわらず、相手がそれに従わない場合には、2つの対処法が考えられます。

①家庭裁判所に申し出をして、履行勧告を出してもらう。

履行勧告は、家庭裁判所が、約束を守らない相手に対し、電話を掛けたり書面で通知することにより、面会交流を行うように勧告することです。
この申し出は、簡単に調停、審判を行った家庭裁判所に電話等で申し立てることができます。

 

②家庭裁判所に間接強制の申し立てをする。

間接強制は、面会交流を拒否すると、一回当たりいくらのペナルティーを支払う、という命令を家庭裁判所が出すことで、間接的に面会交流を強制することです。

面会交流については、子供の気持ちなどもあるため直接的な強制執行は認められていませんが、金銭的なペナルティーを与えることによる間接強制は認められているのです。

近年、裁判所は面会交流の重要性を認識しており、間接強制のペナルティーも高額を命じるケースも多くなりました。一度も面会交流の約束を守らないような悪質なケースでは、1回あたり50万円以上のペナルティーを課したケースもあります。

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別居時に用意する書類に関するご相談

今回は、離婚前に別居を考えている方からのご相談です。

【ご相談】
妻と離婚の話し合いをしており、離婚前に別居しようと考えています。
私が家を出る形になりますが、その際に準備しておいた方がいい書類などはあるのでしょうか。

【アドバイス】
離婚前に別居される夫婦は多いですね。
衝動的に別居してしまうと、必要な書類を別居前の家に置いてきてしまい後から困るようなケースもあります。


離婚の際には様々な書類が必要となります。

主に以下の書類を用意することをお勧めします。

1.収入のわかる資料
離婚前に別居をする場合、別居中も夫婦は婚姻費用を分担する必要があります。
婚姻費用というのは、生活費と考えてもらえば大丈夫です。
婚姻費用は、夫婦それぞれの収入をもとに計算することになります。


そのため、夫婦の収入がわかる資料が必要です。
給与所得者の場合、昨年末に勤務先で発行された源泉徴収票を用意しましょう。
基本的に、源泉徴収票の支払金額の欄に書かれた金額をもとに婚姻費用を計算することになります。

お子さんがいる場合、離婚後の養育費もこの源泉徴収票に書かれた夫婦の年収をもとに計算することになります。

自営業者の場合には、前年度の確定申告書を用意しましょう。

また、家庭裁判所での婚姻費用の調停をする際、給与明細3か月分の提出が必要になる場合があるため、給与明細もきちんと手元に残しておきましょう。

2.共有財産のわかる資料
離婚するときには、結婚期間中に夫婦で協力して築いた財産(共有財産)を分け合うことが必要です。これを財産分与といいます。
財産分与をするためには、共有財産を把握しておく必要があります。
共有財産には様々なものがありますが、主なものについて説明します。


①預貯金
財産分与の際は、通常別居時の残高を共有財産として算定します。別居後に増えた預貯金は夫婦で協力して築いた財産とは考えない場合が多いからです。
通帳の記帳を行い、別居時の残高を確認しておきましょう。

また、自分の口座から引き落とされている固定費の内容を確認しておきましょう。電気代、ガス代、水道代、新聞代、家賃、通信費などがどれだけかかっているかを把握しましょう。婚姻費用を算定するときに、このような固定費を自分が負担している場合には、すでに婚姻費用を分担していることになり別途支払う必要はない可能性があります。

結婚前から持っていた預貯金は原則として財産分与の対象にはならないので、結婚前の時点の残高も把握するために古い通帳なども手元に置いておきましょう。
また、配偶者が預貯金を隠す可能性があるため、配偶者の預貯金の情報(金融機関名、支店名、口座番号、残高など)を記録しておきましょう。

 

②不動産
結婚後の購入であれば、不動産も財産分与の対象となります。
不動産の内容や評価額を把握できる資料を用意しておきましょう。
法務局で取得できる不動産の登記事項証明書、毎年自治体から送られてくる固定資産税課税明細書、不動産購入時の売買契約書や住宅ローンの契約書などを用意しておきましょう。

③生命保険、有価証券
解約すれば解約返戻金を受け取れる生命保険は財産分与の対象になります。生命保険については、解約返戻金の予定額が共有財産を計算するときの評価額になります。

株式などの有価証券も結婚後に取得したものであれば基本的に財産分与の対象となります。 共有財産の評価は、基本的に離婚時の株式の時価となります。

生命保険については保険証券を、株式などの有価証券については証券会社の残高証明書などを用意しておきましょう。

④自動車
自動車については時価が共有財産を計算するときの評価額となります。
時価は、中古車販売店のホームページなどを参照して、同じ車種、年式、走行距離などのものを探してみましょう。
自動車については、車検証の写し一式を用意しておきましょう。

 


3.債務の内容がわかる資料
結婚後の債務がある場合、債務の内容がわかる資料を用意しておきましょう。
多いのは、住宅ローンや自動車ローンでしょう。
ローンを組んだ時の金銭消費貸借契約書や、支払予定表などを一式用意しておきましょう。


債務の残高がプラスの共有財産よりも多い場合には、財産分与は基本的には行いません。
ただし、債務も夫婦で分け合うかというと通常そのようなことはなく、債務者になっている人が一人で債務を引き続き返済することになります。

4.相手が有責の場合、その証拠となる資料
相手に離婚原因がある場合、その証拠となる資料を別居前に集めておきましょう。
別居してしまうと入手するのが困難になります。


たとえば不貞行為があった場合、相手と不貞相手が写った写真、相手の行動を記録した日記、相手と不貞相手のメールのやり取り、不貞相手からもらった手紙やプレゼント、相手が不貞相手と使ったクレジットカードの利用明細など、少しでも役に立ちそうなものは記録を残しておきましょう。


裁判などの証拠としては使えなくても、相手との交渉の際に役に立つこともあります。

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住宅ローンと財産分与についてのご相談

今回は、財産分与の代わりに住宅ローンを返済してもらえるかについてのご相談です。

【ご相談】
夫と離婚することが決まり、財産分与や養育費について話し合いをしています。
中学生の子供の親権は、私が持つことで合意しています。
今は家族で夫が住宅ローンを返済中の家に住んでおり、離婚後も私と子供がこの家に住みたいと考えています。


夫は、財産分与と養育費の代わりにするのであれば、今後も住宅ローンの返済を続けると言っています。
夫からは、自分の住居も探す必要があるため、それ以外に財産分与や養育費を払うことはできないとも言われています。


私としては子供のためにも今の生活環境をできるだけ変えたくないので、その案に乗ろうかと考えています。
何か問題はあるでしょうか。

 

【アドバイス】
財産分与や養育費の代わりに住宅ローンを支払ってもらいたい、というご相談は結構多いですね。
当事者同士で合意すれば、そのような方法も可能ではあります。
ただし、実は様々なリスクがあるので、慎重に判断する必要があります。

①金融機関との関係や住宅ローン控除の問題
銀行等で住宅ローンを組む際に、本人が居住するという条件で審査をして融資が実行されています。


住宅ローンは通常のローンよりも金利などの条件が優遇されており、それはローンの名義人本人が住んでいる家であればしっかりローンを返済する見込みが高いという理由もあります。


そのため、本人が住所を変更する場合には通常金融機関に申し出る必要があり、その際に金融機関から契約違反を指摘される可能性もあります。(ただ、実際には返済が滞らない限り黙認する金融機関が多いようです。)

また、住宅ローン控除による減税を受けている場合、本人がその家に住んでいなければ控除を受けることができません。ご主人がそのことをきちんと理解していればよいですが、そうでなかった場合に後から思わぬ税金が増えたことでトラブルになる可能性があります。

 

②ローンの支払いが滞るリスクの問題
離婚の際はご主人がきちんとローンを返済すると話していても、今後のご主人の状況により、その約束が守られる保証はありません。
自分が住んでいない家のローンを払い続けるのは、通常気の進むものではありません。


特に、ご主人が離婚後に再婚した場合には新たな家族との生活を優先する可能性が高いでしょう。
離婚から年月が経ち、関係性が希薄になればなるほど返済が滞るリスクは高まります。
しかも、相談者さんはご主人が返済を続けているのかどうか当事者ではないため把握することができません。

万一ご主人のローンの返済が滞ると、金融機関は抵当権を実行して、自宅が競売にかけられるなどということが起こります。そうなると、相談者さん親子は家を出ていかなければならなくなります。
ご主人の自主的な支払いに委ねるのは、リスクが高いと言わざるを得ません。

③家の名義の問題
家の登記の名義は、ご主人一人であると想像します。
そうすると、あくまでもこの家はご主人のものであり、相談者さんがいくら住み続けても相談者さんの財産になることはありません。

離婚する際に名義を妻(相談者さん)に変えればいいと思うかもしれませんが、ローン返済中であればそれは金融機関が簡単には認めてくれません。
金融機関に無断で名義を変えると、契約違反としてローンの一括返済を求められるリスクもあります。

ローン返済後に名義を変えればいいと思うかもしれませんが、離婚から長い年月が経った後にご主人がそれに応じてくれる保証はありません。
また、離婚から時間が経っているため、名義を変えるには贈与税が課税される可能性が高いでしょう。

ご主人のものであるということは、家をどのように処分するかはご主人の権限で決めることができます。
ご主人が売却したいと思えば、相談者さんはそれを止めることはできません。
いつまで家に住み続けられるのか不安定な立場となってしまうのです。

また、将来的にご主人が死亡して相続が発生したとき、お子さんはご主人の相続人となりますが、相談者さんは相続人になりません。
ご主人が再婚していなければお子さんが家を相続できることになりますが、再婚していれば妻や子供も相続人となります。
ご主人がお子さんにこの家を相続させるという遺言を残してくれればよいですが、そうでない場合にはほかの相続人と遺産分割協議をしなければなりません。

確実に家を自分の名義にしたいのであれば、お金を貯めてご主人から家を買い取るなどの方法しかありません。


以上のようなリスクや問題があるため、慎重に考えた方がよいでしょう。
相談者さんが、期間限定であと3年だけこの家に住みたい、というような場合にはよい方法かもしれませんが、長期にわたる場合にはリスクが多いためあまりお勧めできる方法ではありません。


期間限定で妻と子供が夫名義の家に住み続ける場合には、その旨の契約書を作っておきましょう。
たとえば、お子さんが高校を卒業するまでの間にご主人との賃貸借契約を結び、それまでの間、事実上養育費の代わりに住宅ローンを支払うという内容の契約を結ぶことなどが考えられます。

このような特殊な契約を含めた離婚協議書を作るには、なるべく弁護士に相談した方が安心です。

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