今回は、離婚時のペットに関するご相談です。
【ご相談】
私たち夫婦には子供はいませんが、ペットの犬を子供同然に大切にしてきました。
もうすぐ離婚することになりましたが、このペットについて相談させてください。
ペットは私が引き取りたいと思っておりますが、まだ夫ときちんとした話し合いはできていません。
この場合に、私が引き取ることをどのように主張すればよいでしょうか。また、ペットにかかる飼育費を夫に請求することはできますか?
エサ代、トリミング代、病院代、ペット保険代などで毎月5万円は軽く超えるため、できれば半分負担してもらいたいと考えています。
【アドバイス】
ペットは今や家族同然の大切な存在ですね。
私にできるアドバイスをさせて頂きます。
1.ペットは法律上は「モノ」の扱いになる
ペットを子供同然に可愛がっておられる相談者さんにとっては残酷かもしれませんが、ペットは法律上は「モノ」の扱いになります。
たとえば、ペットを奪った場合でも、「誘拐罪」にはならず、「窃盗罪」になることからもお分かりいただけるかと思います。
ペットは物であるため、結婚期間中に夫婦で飼い始めた場合には「共有財産」となり、財産分与の対象となります。
つまり、預貯金などと同じように、財産として分けることになるのです。
ペットの場合は、預金などと違って半分ずつにすることはできませんから、夫婦のどちらか片方が引き取ることになります。
なお、結婚前から夫婦のどちらかが飼育していたペットの場合には、財産分与の対象とはならず、もともと飼育していた人の所有物ということになります。
相談者さんのペットは結婚後に飼いはじめたということであれば、財産分与の話し合いでペットをどちらが引き取るか決めることになります。
結婚前から相談者さんが飼っていた場合には、話し合う必要もなく相談者さんが引き取ることができます。
万一、結婚前からご主人が飼っていた場合には、ご主人の所有物になりますので、ご主人が望まない限りは相談者さんが引き取ることはできません。
2.養育費のようなものはない
ペットは物として扱われ、子供と同様には法律上扱われません。
そのため、子供の養育費にあたるようなものは残念ながらペットにはありません。
相談者さんのペットのように毎月5万以上の飼育費がかかる場合でも、ペットが病気になって多額の治療費がかかった場合でも、引き取った人が一人で負担することが原則です。
ただし、これはあくまで法律上の根拠はないという話なので、当事者間でペットの飼育費を分担する契約をすることは問題ありません。
相手が拒否した場合には、法律上支払いを請求することはできないということです。
また、養育費がないことと同様、子供と離れて暮らす親が子供と面会する権利である「面会交流権」もペットの場合にはありません。
ただし、これもあくまで法律上の根拠はないということです。
たとえば、飼育費を一部支払ってもらうことを条件に、毎月ペットと面会させるという約束をすることも当事者間で合意すれば可能です。
そのような合意をした場合には、合意書などを作成し、合意内容を明確にしておきましょう。
相談者さんがご主人に飼育費を請求できるかどうかは、ご主人のペットに対する思い入れの程度によるところが大きいでしょう。
3.ペットをどちらが引き取るかの決め方
当事者同士の話し合いでどちらが引き取るかを決めるのが基本です。
その際、次のようなことをポイントにするとよいでしょう。
①飼育する時間があり、環境が整っているか
②飼育費を無理なく負担することができるか(高齢になり医療費が高額になった場合も問題ないか)
③ペットがどちらになついているのか
④これまで主にどちらが世話をしていたのか
ペットは法律上は物になりますが、どちらが引き取るかを考えるときには「子供」と同じように考えてあげるとよいのではないでしょうか。
ペットにとってどちらが飼育者として適しているのか、自分たちの感情だけではなく、客観的に判断することが大切です。
相談者さんがご主人に引き取ることを主張する場合にも、上記のポイントを踏まえて、ペットにとって相談者さんが引き取った方が幸せに過ごせることを説明するとよいのではないでしょうか。
大変失礼ですが、もし相談者さんがペットを一人で飼育する経済力がない等、ペットを飼育できる環境でない場合には、ご主人に譲るということも検討してみる必要があります。
子供と違って養育費を請求できない分、現実的に判断する必要があります。
どうしても双方が譲らず、自分が引き取りたい場合には、他の財産を多めに相手に譲るなどの交渉を考える必要があります。
相談者さんご夫婦のように子供同然にペットを可愛がってきた場合、当事者同士の話し合いが長引くことも多々あります。
当事者同士の話し合いで決められないときは、ほかの財産の場合と同様、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てることになります。