離婚前の別居についてのご相談

今回は、離婚前の別居についてのご相談です。


【ご相談】
妻との離婚を考えています。
離婚自体は妻も同意していますが、子供もいるので色々と条件を決めるまでには時間がかかりそうです。
ただ、すでに夫婦関係は最悪なので、一緒に暮らすことはお互いにとってストレスでしかありません。
私はすぐにでも別居したいと思っていますが、別居することで不利になることはあるのでしょうか。
また、別居すると家賃などのお金が余分にかかりますし、妻に家事をやってもらうわけでもないので、今まで払っていた生活費を払いたくないのですが払わない方法はありますか?

 

【アドバイス】
離婚前に別居をする夫婦は沢山いらっしゃいますね。
別居にはメリットもありますが注意点もあります。
私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.一方的な別居は問題になる
別居をする場合の注意点として、一方的に別居することは避けましょう。
夫婦には同居する義務がありますので、相手の同意なく一方的に別居をすると、「同居義務違反」となってしまいます。


そうなると、離婚原因の一つである「悪意の遺棄」という認定がされてしまうことがあります。


悪意の遺棄とは、夫婦の義務である、同居・協力・扶助の義務を怠ることです。
悪意の遺棄と認められた場合、慰謝料の請求をされてしまう可能性もあります。


いきなり家を出てしまうようなことはせず、まずは奥様ときちんと話し合いをしましょう。
双方が薄々別居を望んでいるような状況であっても、後から一方的な別居だったと言われないように、きちんと話をしてから出ていく方が安全です。

 

ただし、一方的な別居であっても、DV被害などがある場合には同居義務違反の問題は起こりません。そのような場合は、一刻も早く身の安全を図ることが大切です。

 

2.別居中も婚姻費用を分担する必要がある
別居をすると、通常今までよりも生活費が余分にかかりますし、家事も各自でやることになります。
そのため、今まで通りの生活費を払うことに抵抗を感じるというお気持ちは理解できます。


ただし、別居中の夫婦であっても、婚姻費用を分担する義務があります。
相談者さんの収入と奥様の収入にもよりますが、相談者さんの収入のほうが高い場合は婚姻費用を払う義務がある可能性が高くなります。


婚姻費用をいくら払うべきかは、家庭裁判所が採用する算定表を利用することで、簡易な計算が可能です。
相談者さんの収入、奥様の収入、お子様の人数、年齢の情報により計算できるような仕組みになっています。


もし配偶者から婚姻費用分担調停を申し立てられた場合、この算定表通りの婚姻費用が認められる可能性が高くなります。

 

ただし、お互いが納得しているのであれば、婚姻費用を払わないと取り決めることも可能です。
いずれにせよ、別居する前に婚姻費用についてはきちんと話し合っておくことが大切です。


3.親権を望む場合、別居すると不利になる
お子様がいらっしゃるということですが、もし相談者さんが親権者になることを望んでいる場合、子供と別居すると親権争いで不利になってしまいます。


親権者を決めるときに、今の環境に問題がない場合には、子供の環境を変えずに今一緒に暮らしている親を親権者にする方がよいという考え方をされるためです。


元々親権については、母親の方がかなり有利というのが実情です。
相談者さんが子供の親権を取りたい場合には、子供を連れていく方が有利になりますが、勝手に子供を連れて出ていくことは「違法な連れ去り」とみなされる可能性もありますのでやめましょう。


離婚するまでどちらが子供と生活する監護者になるか決められない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて子供の監護者を決める方法もあります。


4.別居をすると、離婚成立まで長引くケースもある
別居によってお互いに余分なストレスを感じずに済むなどのメリットがありますが、かえって離婚成立まで長引くケースもあります。


上述したように、別居中も夫婦には婚姻費用を分担する義務があります。


そのため、婚姻費用を受け取る側は、婚姻費用をもらい続けるためにあえて別居のまま離婚せずにダラダラと長引かせようとするというケースも見受けられます。


最初は離婚に同意していた配偶者であっても、別居してから気が変わり、このまま離婚せずに別居生活を続けたいと考える可能性もあります。


離婚前の別居をする場合、ある程度タイムスケジュールを立てたうえで計画的に実行することをお勧めします。
当事者同士の話し合いが長引きそうな場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てるとよいでしょう。

 

5.別居するまでに財産の確認を
離婚するときには共有財産を分け合う財産分与をすることになります。
別居のために家を出る場合、財産の状況を把握することが難しくなります。


そうなると、配偶者が財産を隠してしまったり、勝手に処分してしまうというリスクもあります。
そのようなことを避けるために、別居前に財産の状況を把握し、証拠となる書類などは確保しておきましょう。

f:id:couple_consultation:20200409153304j:plain