財産分与(将来の退職金)についてのご相談

今回は、将来の退職金を財産分与で請求できるかについてのご相談です。

 

ご相談


もうすぐ夫と離婚予定の40代女性です。性格の不一致による離婚なので、お互い慰謝料は無しということは納得しています。
今は財産分与について話し合いをしているところです。夫は大企業勤務で将来それなりの退職金をもらえる見込みですが、退職金を財産分与で請求することはできますか?夫は50歳なので、退職金がもらえるのは10年程度先になる見込みですが、それまで会社を辞めることはないと思います。

 アドバイス


まだ支払われていない退職金を財産分与で請求できるかは、気になるところですね。
私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

1.将来の退職金を財産分与で請求できるのか


将来支給予定の退職金を財産分与で請求できるかは、ケースによって異なります。
財産分与の対象財産と認められるためには、いくつかのポイントがあります。

 
①会社の就業規則などで、退職金が支給されることになっているのか。


そもそも会社に退職金制度があるかどうかですが、この点は今回のご相談のケースでは問題ないかと思います。

 
②会社の経営状況に問題がないか。


会社の経営状況が悪化して最悪倒産してしまった場合、退職金は支給されません。
そのため、会社の経営状況も退職金の支給見込みの判断材料となり、支給される見込みが低ければ財産分与の対象とするべきではありません。

 

③退職金がもらえるまで勤務する見込みが高いか。


退職金制度のある会社であっても、勤続年数が短かったり途中で退職する可能性が高い場合には、退職金が支給されなかったり、支給されるとしても少額しか支給されない可能性があります。そのような場合には、退職金を財産分与の対象とすべきでないとされたり、対象となる退職金を低く計算したりすることがあります。

ご相談のケースでは、定年退職まで勤務見込みということなので、この点は問題ないかと思います。

 
④支払いまでの期間がどの程度あるか。


退職金が支払われるまでの期間が10年以上あるような場合だと、途中で辞めてしまう可能性や経営状況や退職金制度が変わる可能性なども高くなり、退職金の見込みの蓋然性が低くなってきます。そのため、支払いまでの期間が長くなるほど退職金を財産分与の対象とできる可能性が低くなります。

今回のご相談のケースでは、約10年後の支払いとのことなので、相手が任意で応じてくれない限り、財産分与として請求するのは難しい可能性が高くなります。

 2.財産分与の対象とする場合の計算方法


財産分与の対象とする場合の計算方法は明確に決まっているわけではありませんが、一つの例として紹介します。

①定年退職時の退職金の見込み金額を算出する。(大手企業ということなので、役職ごとの見込み退職金額がある程度わかるかと思います。)
②その見込み退職金額から、結婚前と別居後の勤務分を差し引きます。

(例)
退職金見込み額 2000万円
22歳から60歳まで勤務
28歳で結婚、50歳で別居、離婚

2000万円×22(結婚年数)/38(勤続年数)=約1158万円
この1158万円からさらに、将来もらうはずのものを今受け取ることによる利息を控除します。
この例の場合には、将来の退職金のうち、1150万円程度を財産分与の対象とすることが考えられます。

 

 

 

まとめ

今回のご相談のケースで退職金を財産分与の対象として請求できるかどうかは微妙なところです。ただし、相手が任意で支払ってくれるのであれば問題ありません。相手との話し合いの中で、将来の退職金を財産分与の対象にするケースもあることを伝えたうえで、お互い歩み寄りができないかを探り合っていってはいかがでしょうか。

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