今回は、相手が原因で離婚した場合の証明についてのご相談です。
ご相談
夫の不貞が原因で離婚しようと思っています。不貞については夫も認めており、離婚には同意していて、今は条件について話し合っているところです。
離婚した場合に、離婚原因が夫にあったことを証明することはできるのでしょうか。
年齢的にいずれ再婚を考える可能性があるので、そのときに離婚原因が自分ではなく夫にあったことを明らかにしたいです。
アドバイス
相手が離婚原因を作った場合には、そのことをはっきりさせておきたいですよね。私にできるアドバイスをさせて頂きます。
1.慰謝料について取り決め、公正証書を作成する
相手の不貞行為が原因で離婚する場合には、高額でなくてもよいので慰謝料を受け取るようにしましょう。
そして、慰謝料について取り決めた内容は必ず文書にして、双方の署名捺印をしましょう。
公正証書で作成するのがベストです。
公正証書は、公証役場という公的な機関で作成する文書です。公証人の前で当事者同士が内容を確認し、認めたうえで、最後に書類に署名捺印をします。
公証人は、当事者の本人確認と文書の内容の確認を行ったうえで文書を完成させるため、本人たちが間違いなく公正証書に書かれた内容を認めたことになります。
そのため、公正証書に書かれた内容は、証拠能力や信用性が高くなります。
公正証書の原本は公証役場に保管されるため、万一紛失しても安心です。
2.慰謝料は、夫と不貞相手の両方に請求できる
慰謝料については、配偶者と不貞相手の両方に請求するとよいでしょう。
ただし、二人に請求すれば二倍もらえるというわけではなく、配偶者と不貞相手は連帯債務者になって、二人で慰謝料を分担して支払うのが普通です。
たとえば、不貞行為の慰謝料を200万円と考えている場合、この200万円について配偶者と不貞相手は連帯債務を負っていることとなり、あなたは200万全額を配偶者に請求することも、不貞相手だけに請求することも可能です。
夫については、離婚協議の内容の一部として慰謝料について盛り込んだ公正証書を作成することになります。
文面には、単に慰謝料いくらを支払う、というだけでなく、「不貞行為による慰謝料としていくら払う」と記載するほうがよいでしょう。
離婚する場合、慰謝料と財産分与を分けて考えずに、両方をまとめた形でいくら支払う、としてしまうケースもありますが、そうすると相手が離婚原因を作ったことが明確になりません。
あくまでも財産分与と慰謝料は別々のものとして考え、それぞれについて金額等を決めましょう。
一括での支払いが困難な場合には、分割払いの方法を取り決めることもあります。
分割払いの場合には、途中で不払いになることを防ぐため、必ず公正証書を作成しましょう。万一不払いになった場合に、すぐに強制執行を申し立てることができます。
3.不貞相手とは示談書を作成する
不貞相手とは、慰謝料について取り決めた示談書を作成するとよいでしょう。こちらについても可能であれば公正証書を作成しましょう。
示談書には、夫との不貞行為があった事実を認めること、それによる精神的苦痛や夫婦関係を破壊させたことに対する慰謝料の支払い義務を認めることを記載しましょう。
ただし、不貞相手との示談書や夫との離婚協議書については、むやみに人に見せるべきものではありません。
示談書には、この件を第三者に一切公表しないことを約束する秘密保持条項を付ける場合もあり、その場合は当然約束を守らなければなりません。
むやみに公表すると、場合によっては名誉棄損などの犯罪になってしまう可能性や、慰謝料請求をされてしまう可能性もあります。
これらの書類はあくまでもお守りのようなものとして、いざというときに自分の潔白を証明できるものという程度に考えておきましょう。