年金分割をしたくない場合

今回は、年金分割をしたくないという方からのご相談です。

 

ご相談

妻と離婚することになりました。

大体の離婚条件も話し合いが済んでおり、親権は妻で、養育費や財産分与についてもおおむね決まっています。

一つ心配なのが、年金分割のことです。

私は結婚期間中の15年間ずっと厚生年金に加入しており、妻は専業主婦でした。

このような場合、年金分割を妻が求めた場合には必ず応じなければならないのでしょうか。

今のところ妻からは何も言われていませんが、分割しないで済む方法があれば、正直分割したくありません。

養育費や財産分与は相場以上に払う予定なので、年金まで取られるのは避けたいのが本音です。

 

アドバイス

年金分割の制度が始まり、気にされる方も多くなりましたね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

年金分割制度とは

年金分割は、結婚期間中に厚生年金保険料を納付していた場合に、その納付実績を夫婦で分け合う制度です。

分割を受けた側は将来受け取る年金額が増えることになり、分割された側は将来受け取る年金額が減ることになります。

相談者様のケースでは、相談者様が厚生年金保険料を納付しており、奥様は専業主婦で扶養に入っていたということなので、相談者様の納付実績を夫婦で分け合うことになります。

 

年金分割には3号分割と合意分割がある

この年金分割には、3号分割と合意分割があります。

3号分割と合意分割の違いは、分割される年金保険料の納付期間の範囲です。

3号分割の場合、平成20年4月以降の厚生年金の納付実績が対象となり、合意分割の場合には結婚期間全体の厚生年金の納付実績が対象となります。

 

3号分割については、請求者が一人で年金分割の手続きをすることができます。

 

一方、合意分割の場合には、夫婦で合意(調停などによる決定を含む)をする必要があります。

 

そのため、もしも相談者様の奥様が3号分割をしようとすれば、相談者様の合意がなくても一人で手続きができるということです。

これを阻止する方法は、残念ながらありません。

 

一方、合意分割については、基本的に夫婦での合意ができなければ奥様は手続きをすることができません。

年金分割について話し合い、奥様が年金分割の権利を放棄してくれるのであれば、分割せずに済みます。

 

放棄してもらうかあえて年金分割に触れないか

年金分割をしたくない場合、現実的な選択肢としては2つあると思います。

一つ目は、年金分割について奥様と話し合い、年金分割はしないという同意を得ることです。

年金分割をしないという合意ができた場合、それをきちんと書面に残すことが大切です。

離婚協議書を作成する際、「年金分割を行わないことに合意した」という内容をしっかりと記載しておきましょう。

 

ただし、この合意をした場合でも、3号分割については奥様一人で手続きができてしまうため、それを阻止することは現実的には難しいと言わざるを得ません。

 

奥様に年金分割をしないことに納得してもらうためには、財産分与などで奥様の意向をできるだけ尊重するなど、年金分割以外の面でメリットがあるようにして説得すればスムーズに話し合いが進む可能性があります。

 

二つ目の方法は、年金分割について自分からは何も話さないことです。

年金分割の請求ができるのは、離婚から2年以内です。この期限を過ぎると、手続きができなくなります。

奥様の性格にもよりますが、2年間請求しそうもないのであれば、あえて自分から年金分割の件には触れずに離婚してしまうと言うのも選択肢の一つです。

ただし、上述のとおり3号分割については離婚後も奥様一人で手続きができますので、2年以内に年金分割のことを思い立ち、一人で手続きをしてしまう可能性は十分にあります。

年金分割については認知度も上がってきているため、奥様が知らない可能性は低いと考えられます。

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