【離婚慰謝料請求と時効③】慰謝料請求の時効を中断させる方法

今回は離婚慰謝料請求と時効についての最後の記事になります。

 

慰謝料請求の時効が永久に来ないケースもある

不貞行為の慰謝料請求ケースの中には永久に時効が来ないケースもあります。

不貞行為などの違法行為の時効は原則的に3年です。
ただ、民法159条には夫婦の権利についての定めがあるため注意が必要になります。

 

民法159条には「夫婦の一方が有する他方に対する権利は離婚して6カ月を経過するまで消えません」と記載されています。

夫婦の片方がもう片方に慰謝料請求する場合、離婚後6カ月は権利が消えないというルールです。

 

逆に考えれば配偶者が不貞行為の慰謝料請求権は離婚しない限り消滅しないということでもあります。

夫婦でいる限り永久に時効がやって来ないと考えることもできるのです。
このように、慰謝料請求の時効が永久に来ないケースもあります。

 

離婚慰謝料や不貞行為慰謝料の時効と起算点は慰謝料請求相手やケースにより変わってくるため複雑です。

 

時効の残り期間について正確に把握したい。
自分の慰謝料請求においては起算点がいつになるか知りたい。
このような場合は専門家である弁護士に起算点と時効について計算してもらうことをおすすめします。

 

なお、民法159条はあくまで配偶者に対しての時効ルールです。
不貞行為の相手に慰謝料請求するときは適用されませんので注意してください。

不貞行為の相手への慰謝料請求の時効はすでにお話しした通り3年で、永久に時効が来ないケースはありません。

 

慰謝料請求では時効や起算点で揉めやすい

慰謝料請求の起算点はトラブルになりやすいポイントです。

たとえば浮気相手に慰謝料請求する場合や離婚せずに配偶者に慰謝料請求する場合は「不貞行為を知ったとき」が時効の起算点になります。

 

知ったかどうかは目に見えないため、不貞行為の相手や配偶者から「もっと前から知っていたのではないか」と主張されて揉めることがあるのです。
知ったときがいつかは目に見えないため証明が難しいポイントになります。

 

慰謝料請求の時効間際に慰謝料請求するときは、配偶者や不貞行為の相手から「もっと前から知っていたのではないか(すでに慰謝料請求の時効期間は過ぎているのではないか)」と反論されるリスクが考えられます。
時効や起算点は揉めやすいポイントなのです。

 

スムーズに慰謝料請求するためにも、時効関係で反論されないよう足場固めが重要になります。
弁護士に相談して時効や起算点の確認をするとともに、慰謝料請求の際は対策を講じておきましょう。

 

慰謝料請求の時効を中断させる方法

慰謝料請求をしたいが準備に手間取ってしまい時効間際になってしまった。

 

慰謝料請求しようと決意したときにはすでに時効が迫っていた。
このようなときは、慰謝料請求を進めている間に時効が完成する可能性があります。

 

慰謝料請求の時効には「中断」という方法があります。

時効を中断することにより慰謝料請求の時効は振り出しに(ゼロ)に戻るのです。
たとえば慰謝料請求の時効が2年11カ月経過していたとします。

この時点で中断の方法を取ることにより、慰謝料請求の時効は起算点、つまり0カ月に戻るのです。

 

慰謝料請求が間に合わない場合や手続きがぎりぎりになってしまう場合は中断により時効完成を防ぐことが可能になっています。

時効の中断は具体的にどのようにしておこなうのか、方法を見ていきましょう。

 

慰謝料の請求をおこない時効を中断する

慰謝料請求の時効は請求により中断します。

請求とは支払い側にただ「払ってください」と申し入れることではなく、裁判や調停、和解、支払督促など手続きを使った請求です。

請求をおこなうことにより時効は中断され、再びゼロからカウントがスタートします。

 

内容証明郵便を使って時効を中断する

請求による時効の中断をおこないたくてもすぐに裁判などを起こせないケースもあります。
すぐに請求できないときは内容証明郵便を使った時効中断の方法があるのです。

まず慰謝料の支払い側に内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便を元配偶者(配偶者)や不貞行為の相手に送ると6カ月間時効が止まります。

時効が止まっている間に裁判などの請求をおこなえば、時効の中断効果が得られるのです。

 

慰謝料請求の時効の注意点

慰謝料請求の時効には中断以外にも知っておきたいポイントが3つあります。

 

慰謝料請求の時効は援用によって完成する

慰謝料請求の時効は起算点から数えて時効期間が経過すれば自動的に完成するわけではありません。

 

慰謝料の支払い側が「援用(時効が完成しましたと主張すること)」をおこなってはじめて時効が完成するのです。

つまり、時効期間が経過していても慰謝料を支払う側が時効の援用をしていなければ時効は完成しません。

時効を完成させるかどうかは個人の権利なので、援用して初めて時効が完成するように配慮されているのです。

 

時効期間が経過していても、援用がおこなわれていないケースもあります。
時効間際や時効完成後でも、諦めずに弁護士に相談してみるといいでしょう。

 

慰謝料の自発的な支払いに時効は関係ない

不貞行為の相手や離婚した配偶者などから謝意などで慰謝料の支払いがおこなわれた場合は、時効期間は特に関係ありません。
時効が完成していようが完成していまいが、相手が自発的に支払いをおこなう場合は慰謝料を受け取ることが可能です。

 

時効期間が経過しているからといって受け取れないわけではありません。

 

配偶者や不貞行為の相手が時効の主張ができないケースもある

離婚した元配偶者や不貞行為の相手などが時効の完成を主張しようとしても、主張が許されないケースがあります。

 

たとえば慰謝料の支払い側が慰謝料の一部を支払っている場合は債務を認めたことになりますから、時効完成の主張はできません。
慰謝料の支払い義務を認めたうえで時効を主張するという奇妙な状況になってしまうからです。
離婚した配偶者や不貞行為の相手が慰謝料支払いの姿勢を見せたときも同じく債務を認めたことになりますから、時効の主張ができなくなってしまいます。

 

 

まとめ

離婚慰謝料・不貞行為の慰謝料は基本的に「3年」が時効期間になります。
起算点については請求相手やケースによって変わってくるため注意が必要です。
3年という時効期間の他に20年という除斥期間もあるため注意してください。

 

時効の起算点の確認や期間の計算は法律の専門知識を要する部分です。
計算や起算点を誤ってしまうと、できたはずの慰謝料請求ができなくなってしまいます。

慰謝料請求をミスなくおこなうためにも、離婚慰謝料・不貞行為慰謝料の時効については弁護士に相談することをおすすめします。

 

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