水商売の女性への慰謝料請求のご相談

今回は、水商売の女性への慰謝料請求についてのご相談です。

 

ご相談

夫が不倫をしており、離婚を考えています。

現在夫にばれないように不倫の証拠を集めているところですが、夫の不倫相手はキャバクラで働いている女性のようです。

夫に慰謝料請求をすることはもちろんですが、相手の女性に対しても慰謝料請求をしたいと考えています。

相手がキャバクラ嬢の場合、色恋営業のようなものがあると思いますが、その場合でも慰謝料請求は可能でしょうか?

 

アドバイス

ご主人の不倫のことを知り、つらいお気持ちでいらっしゃることと思います。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

水商売の女性が相手でも慰謝料請求は可能

キャバクラやクラブに勤める水商売の女性が相手であっても、不貞行為の事実があれば慰謝料請求をすることはできます。

 

実際に、平成28年の判決で銀座のクラブホステスへの慰謝料請求が認められているため概要を紹介します。

 

判例の概要

銀座のクラブホステスが客である夫とホテルに宿泊したことに対し、妻が不貞行為の慰謝料請求をしました。

ホステス側は、営業活動の一環としてホテルに宿泊しただけで不貞行為はないと主張しました。

裁判所は、同伴出勤等は営業活動の一環として認められるが、ホテルに宿泊することは営業活動とは通常考えられず、ホテルに二人で宿泊したことは肉体関係があったことを推認させるとして、妻の慰謝料請求を認めました。

 

この判例からもわかるように、不貞行為の事実が認められる場合には不貞相手が水商売の女性であっても慰謝料請求が認められる可能性が高いでしょう。

 

ただし、古い判例では水商売女性によるいわゆる「枕営業」の場合に、不貞行為とは認定せずに慰謝料請求が認められなかった事例もあるため、画一的な取り扱いがされているわけではありません。

 

離婚慰謝料は不貞相手には請求できない

不貞行為による慰謝料については、不貞行為そのものに対する慰謝料請求と、不貞行為が原因で離婚となった場合の離婚慰謝料があります。

 

不貞相手の女性に請求できるのは、あくまで不貞行為そのものに対する慰謝料請求で、離婚慰謝料までは請求することができません。

離婚するかどうかは夫婦が決めることであるため、離婚についての慰謝料を不貞相手にまで請求することは適当でないというのが裁判所の判断のようです。

 

離婚慰謝料は不貞慰謝料よりも高額となることが一般的ですが、離婚慰謝料を請求できる相手は配偶者だけであり、不貞相手に対しては請求することは難しいでしょう。

 

今回相談者さんは離婚も考えているということですが、離婚についての慰謝料を不貞相手に請求することはできませんので、注意が必要です。

 

配偶者と不貞相手から二重に慰謝料を受け取ることができるわけではない

時々、不貞相手と配偶者の両方に慰謝料請求をすることで、2倍の慰謝料が受け取れると考えている方がいらっしゃいますが、基本的にそれは認められません。

不貞行為は、配偶者と不貞相手が二人で共同して不法行為を行ったものとして扱われます。

そして、共同不法行為を行った二人は、連帯して慰謝料を支払う義務を負うことになります。

たとえば、不貞行為の慰謝料が200万円と認定された場合に、二人に対して200万円を請求することができますが、受け取ることができる金額は合わせて200万円ということになります。

200万円の内訳が、100%配偶者からであっても不貞相手からであってもかまいませんし、それぞれから100万円ずつとすることもできますが、200万円を受け取った時点でそれ以上請求することはできません。

 

まとめ

不貞相手が水商売の女性であっても、基本的に慰謝料の請求は可能です。

しっかりと証拠をそろえて相手が言い逃れできないようにしたうえで、不貞相手に対しても慰謝料請求をするとよいのではないでしょうか。

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