【夫が10年以上も浮気】慰謝料はどのぐらい請求できる?慰謝料相場や注意点を事例で解説(2)

この記事では、10年以上の浮気による慰謝料の請求事例についてみていきたいと思います。

 

10年以上の浮気による慰謝料の請求事例

浮気の慰謝料相場は50~300万円になっています。
慰謝料額は増減要素などを考慮してケースバイケースで計算されるため、事例によってかなり慰謝料額が異なるのが基本です。

 

ただ、一般的には浮気しても離婚しなかったケースでは低めになり、浮気により離婚すれば高めになる傾向があります。

 

10年以上の夫が浮気している場合、どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか。
参考までに実際の浮気の慰謝料請求事例をご紹介します。
浮気の慰謝料相場と比較しながら金額を確認してみてください。

 

夫が17年浮気して800万円の慰謝料が認められた請求事例

夫が17年という長期に渡って浮気をしており、妻が慰謝料請求をした事例です。
妻に認められた慰謝料額は800万円と高額でした。

 

この請求事例では、夫が妻との離婚届を偽造し、浮気相手と結婚していました。
妻は夫が離婚届を捏造していたことを知らず、子供と母子家庭のように暮らしていました。

夫は家庭に生活費を入れることもありませんでした。

 

夫が離婚届を偽造したり家庭にお金を入れなかったりするなど浮気が悪質であったため、浮気の慰謝料相場よりかなり高い800万円という慰謝料が認められました。

(東京地裁平成21年4月8日判決)

 

夫が14年浮気をして500万円の慰謝料が認められた請求事例

夫が浮気相手と10年以上の浮気をしており、妻に500万円の高額慰謝料が認められた請求事例になります。

 

この請求事例では、夫は浮気相手と14年もの期間、浮気をしていました。
しかも、浮気相手との間に子供を作り、浮気相手と結婚するために離婚届を妻に無断に提出していたのです。

そして、浮気相手との婚姻届を提出していました。
浮気相手との間にできた子供も認知していました。

 

妻は勝手に離婚届を提出されてことを知り、慰謝料請求などを求めて裁判を提起します。

裁判では妻に慰謝料500万円が認められた他、妻との離婚は無効と判断されました。
浮気相手との結婚も取り消しという判断です。

離婚が無効になったため慰謝料を請求した妻と浮気をした夫は依然として夫婦ですが、別居生活をしています。

(東京地裁平成14年10月21日判決)

 

妻が浮気をして慰謝料が100万円に減額された請求事例

妻が浮気をしていたにも関わらず慰謝料が減額されたケースもあります。
この請求事例では、最終的に慰謝料100万円が認められました。

 

先にご紹介した請求事例は長期の浮気で高額の慰謝料が認められたケースです。
対してこの請求事例では100万円に減額されるという結果でした。

 

妻は夫と性的関係が10年以上ありませんでした。
妻が男性と出会って浮気し、その後に夫が浮気をいさめましたが、妻は浮気相手と同棲をはじめてしまったのです。

 

夫は妻の浮気相手に800万円の慰謝料と弁護士費用を請求しました。
しかし、夫と妻の間に10年以上まったく性的関係がなかったなどの事情から、慰謝料が100万円に減額されるという結果でした。

(東京地裁平成10年判決)

 

10年以上の浮気に対して慰謝料請求するときの注意点

10年以上の浮気に対して夫などに慰謝料請求するときは注意したいポイントが3つあります。

ポイントに注意したうえで慰謝料請求しなければ、慰謝料の請求自体を失敗する可能性があるのです。

 

10年以上の浮気に対して慰謝料請求するときの3つの注意点を順番に見ていきましょう。

 

10年以上の浮気で慰謝料を請求できないケースもある

10年以上夫が浮気をしていても、慰謝料請求が難しいケースがあります。

たとえば、10年以上の浮気について夫から妥当な慰謝料を支払われた妻がいたとします。

妻は浮気相手にも慰謝料請求しようと思いましたが、慰謝料請求は難しいという判断でした。

 

なぜなら、夫から十分な額の慰謝料が払われていたからです。

夫などの浮気の当事者の片方から十分が額の慰謝料を受け取っている場合は、もう片方の浮気の当事者に慰謝料請求することが難しくなります。

 

この他に、浮気相手は夫が既婚者だと知らなかったケースなどは慰謝料請求が難しくなるのです。

 

夫は浮気相手に「未婚だ」「いずれ(浮気相手と)結婚したい」と常々言っていました。

 

浮気相手は過失なく夫が未婚だと信じておつき合いをしたのです。
このようなケースでは、浮気相手に慰謝料請求したくても、慰謝料請求は難しいという判断になります。
場合によっては逆に夫が慰謝料請求される可能性があるのです。

 

夫が浮気に走ったときに、すでに婚姻関係が破綻していた場合も基本的に慰謝料請求はできません。

浮気のときすでに守られるべきもの(家庭の平穏)は壊れていたからです。
浮気で婚姻関係が破綻していたのではなく、もともと破綻していたわけですから、慰謝料請求はできません。

 

10年以上の浮気で慰謝料請求できるかどうかわからない場合は弁護士に判断してもらうことをおすすめします。

 

浮気により婚姻関係が破綻したなどの証拠が必要

浮気の慰謝料請求をしても、浮気相手などは証拠がなければなかなか慰謝料請求に応じないことでしょう。

 

10年以上の浮気により慰謝料請求する場合は、浮気の証拠が重要です。
証拠がなければ言い逃れされる可能性があります。

 

浮気により慰謝料請求するときは、浮気の証拠をしっかり集めておきましょう。
10年以上の浮気の慰謝料増額要素がある場合は、増額要素を証明する証拠も集めておく必要があります。

 

浮気や慰謝料増額要素の証拠や証拠集めに疑問があれば、弁護士に相談してみましょう。

ケースにあわせた証拠について適切なアドバイスを受けられるはずです。

 

浮気の慰謝料請求には時効がある

浮気の慰謝料請求はいつでも自由にできるわけではありません。
浮気の慰謝料請求には時効があるのです。浮気の慰謝料請求の時効が過ぎると、原則的に慰謝料請求はできなくなります。

 

浮気の基本的な慰謝料請求は「3年」になります。
浮気相手と浮気の事実を知ってから3年経過すると、夫の浮気相手に慰謝料請求できないのです。

 

夫の浮気と浮気相手を知っていて慰謝料請求せず3年以上放置していたケースでは、夫の浮気相手に慰謝料請求できません。

 

浮気の慰謝料請求の時効の計算には法律の専門的な知識が必要です。
浮気の発覚から慰謝料請求まで時間が経過しているケースでは、弁護士に慰謝料請求の時効について確認してもらうといいでしょう。

 

 

長期の浮気や頻度の多い浮気は、基本的に慰謝料の増額要素になります。
夫が10年以上浮気している場合は浮気の期間が長いため、慰謝料も増額請求できる可能性があるのです。

 

ただし、増額要素があっても、要素について証拠がなかったり、効果的に主張できなかったりすると、適正な慰謝料の請求が難しくなります。

 

夫が10年以上長期で浮気をしている場合は、時効なども心配ですから、まずは弁護士に相談して請求の可否をチェックしてもらうといいでしょう。
そのうえで、事情に合わせた慰謝料の増額要素についても、弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

 

【夫が10年以上も浮気】慰謝料はどのぐらい請求できる?慰謝料相場や注意点を事例で解説(1)

夫が10年以上の長期間に渡って浮気をしている場合、慰謝料額を増額請求することはできるのでしょうか。

 

浮気をされていた妻にとって、浮気の長さに応じて慰謝料額を多く請求できるのかどうかは気になるポイントではないでしょうか。

 

この記事と次の記事で、夫が10年以上も浮気していたケースの慰謝料請求について説明します。

 

不倫の慰謝料額は期間の長さや回数の多さも加味される

浮気の慰謝料はさまざまな要因で増減します。

 

浮気の慰謝料の増減要因には期間の長さや回数の多さも含まれています。

基本的に浮気の期間が長い場合は浮気の慰謝料が増額される要因になり、浮気の回数が多い場合も慰謝料の増額要因になるのです。

 

浮気の期間が「長い」とは

過去の浮気の慰謝料請求の判例を参考にした場合、浮気の期間が半年になると浮気期間が長いと判断されます。
対して3カ月ほどだと短いという判断になるのです。


10年以上の夫の浮気は浮気期間が長期のため、高額の慰謝料を請求できる可能性があります。

 

浮気の回数が「多い」とは

浮気の回数は20回ほどの浮気(不貞行為、肉体関係)で多いとされます。
対して1~3回程度の肉体関係では少ないと判断される可能性があります。

 

浮気の回数をはっきりと証明することは困難です。
よって、浮気の証拠などからどの程度の頻度で会っていたかなどを検討し、浮気相手との浮気の回数を判断します。

 

長さや回数以外で慰謝料が増減額される要素

浮気の回数や期間以外にも浮気慰謝料の増減要因になるポイントがあります。

 

なお、慰謝料の増減要素があるからといって、必ず慰謝料が増減されるわけではありません。

あくまで増額につながりやすい要素や減額につながる可能性のある要素になります。

 

夫の10年以上の浮気で以下のような慰謝料の増減要素がある場合は、弁護士に相談したうえで慰謝料請求することをおすすめします。

 

夫婦の婚姻期間

夫と浮気相手の浮気の期間の長さも浮気の慰謝料に関係しますが、夫と浮気をされた妻の婚姻期間の長さも浮気の慰謝料額に関係するのです。

 

婚姻期間が長ければ、浮気により長く続いた家庭に亀裂を生じさせたことになります。

浮気相手と夫の年齢

夫と浮気相手の年齢も浮気の慰謝料額に関係します。

 

浮気している男女の年齢差が大きい場合は、年齢が上の方の思慮分別も問題になります。

浮気相手と夫の年齢が慰謝料の額の計算に関係する可能性があるのです。

 

浮気の主導権を握っていたのはどちらか

浮気の主導権を握っていたのが夫なのか、それとも浮気相手なのかも慰謝料の増減に関係します。

 

たとえば夫が浮気を主導していた場合、妻が浮気相手に夫の10年以上の浮気についての慰謝料請求をした場合は、浮気の主導者は夫だったとして、慰謝料額が減額される可能性があるのです。

 

また、夫が浮気相手の上司や部下だったなどの場合も、慰謝料額が増減されることがあります。
たとえば夫が上司で浮気相手が部下だった場合、上司から迫られると部下である異性は断りにくいなどの事情が考えられるため、慰謝料額に影響する可能性があるのです。

 

浮気相手は夫が既婚者だと知っていたか

浮気相手は夫が既婚だと知って浮気をしたかどうかは慰謝料を請求するうえで重要です。
浮気相手が夫の既婚を過失なく知らなかったケースや、夫が既婚であることを隠して浮気に及んだ場合は、そもそも慰謝料請求自体が難しくなる可能性があります。

 

浮気相手が夫の既婚を知ってさらに浮気を続けた場合は、慰謝料にも影響を与える可能性があるのです。

 

浮気相手が妊娠や出産をしたか

夫の浮気相手が夫の子供を妊娠したり、出産したりしていると、慰謝料の増額要因になる可能性があります。

 

浮気相手が子供を妊娠したり出産したりしている事実は、妻にとって大きな精神的苦痛になると考えられます。
妻にとっては非常にショッキングな事実であるといえるでしょう。
夫と浮気相手の間に子供がいると、慰謝料の増額につながる可能性があります。

 

浮気により婚姻関係が破綻したか

夫と浮気相手の10年以上の浮気により婚姻関係に亀裂が生じると、慰謝料の増額につながる可能性があります。

 

家庭は浮気前のように、特に何事もない状態です。
このようなケースより、浮気により婚姻関係が破綻してしまったケースの方が夫婦関係に浮気が与えたダメージは大きいといえます。

 

夫の浮気が原因で離婚したか

夫の10年以上の浮気で離婚したかによっても慰謝料が変わってきます。

 

夫の10年以上の浮気で夫婦間に亀裂が生じても、離婚していなければまだ夫婦関係を修復できる可能性があるかもしれません。

 

しかし、夫婦が離婚してしまうと、もはや修復の余地はありません。

夫の浮気によって離婚にいたった場合は慰謝料が高額になる傾向にあります。

 

夫婦の間に子供がいる

夫婦の間に子供がいた場合は、夫の10年以上の浮気の慰謝料が増額される可能性があります。

 

なぜなら、浮気が子供の生活や人生にも影響をおよぼすからです。
浮気によって家庭が乱れれば、子供の生活も乱れます。
そして、10年以上の夫の浮気で婚姻関係が破綻すれば子供の人生や将来にも関わるのです。

 

夫婦の間に子供がいれば夫の10年以上の浮気によって子供が影響を受けてしまうため、慰謝料の増額要素になります。

 

浮気相手の意図が悪質である

浮気相手の意図が慰謝料の増額要素になることがあります。

 

たとえば、夫の10年以上の浮気相手が妻に害意や恨みなどを持っており、故意で家庭を壊そうと考えて夫と浮気をしました。
 

浮気発覚時の夫や浮気相手の態度

10年以上の浮気が発覚したときの夫や浮気相手の態度によっても慰謝料は増減する可能性があります。

たとえば、10年以上の浮気が発覚したとき、夫はまったく謝罪せず「浮気などしていない」と否定していました。

 

浮気発覚後の夫や浮気相手の約束の反故

夫の10年以上の浮気が発覚したときに「もう浮気相手には会わない」「もう浮気しない」と約束したのに、その後再び浮気しました。
約束を反故にして隠れて浮気相手に会い、不貞行為を繰り返していたのです。

 

約束を破った場合は悪質な浮気ケースとして、慰謝料の増額要素になる可能性があります。

 

浮気相手の社会的地位や資力

夫が10年以上浮気したときの浮気相手の地位や資力によって浮気慰謝料が増減する可能性があります。

 

たとえば、夫の浮気相手が社会的地位のある人だった場合、地位に応じて慰謝料を増額できることがあるのです。

 

また、夫の浮気相手が豊富な資力を持っていた場合、浮気慰謝料の相場では簡単に支払われて終了してしまいます。
妻の感情がおさまりません。
よって、資力が高い浮気相手への慰謝料請求では、相場より増額して請求することがあるのです。

 

夫の浮気による妻の精神的苦痛の度合い

夫の10年以上の浮気による妻の精神的な苦痛の度合いも慰謝料の増額などにつながる可能性があるのです。

たとえば、夫の10年以上の浮気で妻が心療内科に通院することになり、うつ病と診断されました。
 

夫と妻の間に性交渉がないなどの事情があった

夫と妻の間に性的関係が長期間ないなどの理由から夫婦の片方が浮気に走ったケースや、夫婦の片方が浮気したときに長期間夫婦の間に性交渉がないなどの事情があれば、慰謝料が減額される可能性があるのです。

 

次回は実際に夫婦の間に10年以上性的関係がなかったため慰謝料の減額につながったケースをご紹介しています。

別居前にしておくべき準備とは?

専業主婦であった場合、育児中である場合、別居を選択することは驚くほどの生活の変化をもたらします。

 

離婚や別居を考えるまでにはなっているものの、これまで夫婦で分担できていたことも、もしかしたらあったかもしれません。

 

そのようなことも別居を選択すると、すべて自分でやらなくてはなりません。
本当に別居から離婚へと進んでもよいのかどうか、別居前にご自身の考えや気持ちをまず整理してみてください。

 

別居前にしておくべき準備

共有財産の把握

結婚した後に、購入した土地・家などの不動産、預貯金、車両、有価証券類、など財産分与の対象になる共有財産がどこに、いくらあるのかということを確認しておきましょう。

別居してからだと、通帳や、謄本など確認しづらくなってしまいます。

 

ですから、別居前に確認すべき書類としては、通帳類、証券会社の取引明細書等、不動産がある場合にはその登記簿謄本など、生命保険をかけているようならその証券類、配偶者の収入を証明する書類(給与明細や源泉徴収票、確定申告書など)があげられます。

 

できればこれらの書類は、すべてコピーをとっておくことをお勧めいたします。

 

借金についても、ギャンブルで作った借金など個人的に作ってしまったものを除いて、たとえば住宅ローンなども財産分与の対象になります。

 

不貞行為、暴力行為の証拠を集めておく

配偶者に浮気や不倫がある場合は、不貞行為の証拠を集めておきましょう。

 

・証拠となるメールのコピー
・電話の記録
・証拠写真や不貞行為を自白する音声データ、状況がわかる音声データ
・配偶者の「今後不貞行為は致しません」等の念書
・カーナビの移動記録
・SuicaやPasmoの移動記録
・クレジットカードの明細
・プレゼントなどの証拠物品があればその写真


こういったものが不貞行為の証拠となり得ます。

DVやモラルハラスメント(言葉や態度による精神的な暴力のことをいいます)がある場合は、暴行を受けた際の診断書、DVやモラルハラスメント行為がわかる音声データ、メールの写し、警察に相談などしていれば相談したことがわかる履歴、DVやモラルハラスメントを受けていたことが記されている日記などを収集しておきます。

 

別居前に一度法律相談を受ける

弁護士に確認しておくとよい事項は以下の通りです。

・今後別居から離婚へと進むとどうなるのかの見通し
・収集してきた証拠や別居前にやっておくべきことに不足がないか
・次で触れる別居中の生活費の請求について

 

別居中の生活費は婚姻費用として請求可能

婚姻費用とは、別居期間中の生活費のことです。たとえば専業主婦等でこれまで夫から生活費を受け取り生活していた方は、別居している間は婚姻費用として、生活費の請求をすることができます。

 

別居していても、婚姻関係が続く以上は、婚姻費用を請求することが可能なのです。
請求が可能になる時期は、別居を始めたときですから、別居開始後すぐに請求することが肝心です。

 

もし支払われない場合、裁判所が支払いを認めるのは「調停を申し立てたとき」からの婚姻費用についてですので、そのような場合は、すぐに調停を申し立てる必要があります。

 

婚姻費用の算定方法

婚姻費用がいくらになるかの目安として、「養育費・婚姻費用算定表」というものがあります。
この表は家庭裁判所のホームページに掲載されています。
子どもの数、夫と妻それぞれの収入をもとにして、婚姻費用が●~●万円の間という相場を知ることができます。

 

婚姻費用を請求する方法

婚姻費用を請求する方法としては2段階あり、協議で請求する方法と、話し合いがまとまらなかった場合の調停・審判を申し立てる方法があります。

 

まずは協議で請求

婚姻費用の支払いや額について、夫婦で合意ができる場合は、それで決定されます。
決定した内容は、できれば公正証書にしておき、もしも婚姻費用が支払われなくなった時のために備えておきたいところです。


「強制執行認諾約款付公正証書」にしておくと、支払われなかった婚姻費用について直ちに強制執行をかけることができます。

 

また、本人同士の話し合いが難しいと感じた場合は、交渉段階から弁護士に依頼することも可能です。

 

調停・審判

もし婚姻費用の支払いについての協議が整わない場合は、早い段階で調停を申し立てることをお勧めします。

というのは、婚姻費用の支払いは法律で決められた義務ですだからです。
たとえ相手が支払わないと言ったとしても、調停・審判においてはそれは通用しないのです。

 

婚姻費用を請求する調停は、「婚姻費用分担請求調停」といいます。
この調停の申立の手続きは簡単なので、ご自身で申し立てることができるでしょう。

申立先は、基本的には、相手方の住所地の家庭裁判所です。

 

管轄の裁判所を確認したいときは、下記のリンクを確認してください。

www.courts.go.jp

 

必要書類は下記の通りです。
・申立書及びそのコピー 各1通
・夫婦の戸籍事項全部証明書 1通
・申立人の収入関係の資料(源泉徴収票、確定申告書等のコピー ※給与明細でもよいのですが、もし給与明細を提出する場合は1年分を追って請求されるかもしれません)
・収入印紙1200円分
・郵便切手(金額は、管轄の裁判所の事件係に電話で必ず問い合わせて下さい)

 

 

申立書は裁判所のホームページでダウンロードできます

www.courts.go.jp

 

 

収入印紙は、東京家庭裁判所の場合ですが、地下のコンビニで購入することができます。
期日呼出状などの発送費用として、裁判所が使用するための切手(郵券とも言います)を納めます。
切手の内訳は、申立先の各家庭裁判所で異なります。
家事手続案内で確認してもよいですし、裁判所に電話で教えてもらうこともできます。

 

調停を申し立てると、記載内容と添付書類がチェックされ、担当の調停委員や裁判官のスケジュールが調整されます。

 

期日が決定すると「期日の指定・呼出」という書類が申立人と相手方双方に郵送されます。
相手方は、呼出状に同封されている返送書類に相手方自身の事情を書き込んで家庭裁判所に返送をします。

 

調停には原則的に本人が出席しなくてはなりません。
ないのです期日はおよそ月1回のペースであります。

調停当日は、当事者(夫と妻)と調停委員2名が調停室で話し合いをします。
調停で決着がつけば、裁判所がその内容を調停調書にします。

調停で決着がつかない場合には、調停不成立として、審判手続きに移行してください。
審判では、調停で話し合われてきた双方の言い分を踏まえて、裁判官が適正な婚姻費用の額を決定し、審判を下します。
審判の内容は審判書という書類に記載されます。

調停調書や審判書は、裁判所から当事者に渡されますので、もし支払いが滞るようなことがあれば、強制執行をすることができます。

 

まとめ

本当に離婚してよいのかどうか、自身の気持ちを冷静に整理する機会にもなりますし、配偶者と離れて暮らすことで離婚後の生活ができるかどうかの確認をする機会にもなります。
一時の感情で離婚してしまうことがないよう、別居を機会によく考えてみることが重要です。

 

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離婚が認められる別居期間の目安は5年

協議で離婚が合意できないときは、民法では「法定離婚事由」がある場合に裁判で離婚することができると定められています(民法770条1項)。
別居そのものが「法定離婚事由」になることもあります。

 

では、どれくらいの期間別居することで、離婚できるのでしょうか。
この記事では離婚のための別居と、別居期間を離婚事由とした離婚の際の財産分与の注意点について、わかりやすく説明していきます。

 

別居期間が離婚事由になるケース

別居は「法廷離婚事由」には明記されていません。

「法廷離婚事由」とは、
①不貞行為(民法770条1項1号)
②悪意の遺棄(同条同項2号)
③3年以上の生死不明(同条同項3号)
④強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと(同条同項4号)
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること(同条同項5号)
の5つです。


このうち、別居が離婚の理由になるときに当てはまるのは、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があることの場合です。

それでは、どのような別居が「婚姻を継続しがたい重大な事由」になるでしょうか。

 

長期間の別居

長期間別居することは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるとされています。
なお、どのくらいの期間が「長期間」になるかは、婚姻期間がどの程度になるか、別居期間がどれくらいであるかの比較によって決まります。

 

そのため、どの程度かをざっくり言うことはできませんが、年数単位の別居が必要になることは間違いがないでしょう。

 

法定離婚事由がないときの離婚は、裁判でも成立させることができませんので、相手の同意がなければなりませんが、何年もの時間が必要とはいえ別居は離婚したい側が自ら作り出せる離婚事由です。

 

別居以外にも原因がある場合

離婚を裁判で判断される場合、別居期間以外に、上記で述べた通り婚姻期間の長さや、別居に至る原因が何だったか、夫婦の間に未成熟子がいるかどうかを総合的に考慮して離婚事由があるかを確認されます。

 

そして、婚姻関係が破綻していると判断される場合には離婚が認められます。
未成熟子とは、成人か否かに関わらず、親の扶養・扶助がなければ自分の生活を保持できない子をいいます。

 

有責配偶者の場合

婚姻関係が破綻している場合であっても、「有責配偶者」からの離婚請求については基本的には認められません。

 

有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させた原因を作った配偶者をいいます。
たとえば、配偶者にDV行為を行っていたり、不貞行為を行った者がこれに当たりますが、これらの者からの配偶者への離婚請求は、正義に反するので認容できないということです。

 

有責配偶者からの離婚請求は、長期間の別居を経たとしても離婚は基本的に認められませんが、一定の要件を満たせば認められることもあります。

 

一定の要件とは、
①夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶ
②夫婦の間に未成熟子がいない
③離婚によって相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するというような特段の事情がない
というものです。

 

上記の要件が満たされているとき、裁判所は有責配偶者からの離婚請求だからといって離婚を許さないとすることはできないとされています。

 

離婚調停で離婚が認められる別居期間の目安は5年間

別居以外に、法定離婚事由がない場合、離婚調停などで離婚が認められるためにはどれくらいの別居期間が必要なのでしょうか。

 

外国には一定期間の別居の事実があると、離婚を認めるという法律がありますが、日本にはありません。

 

法改正が待たれるところですが、平成8年に法制審議会が答申した民法改正案では、「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」に婚姻が破綻したと認めるのではどうか、という提案をしていますので、一応は5年が目安になると考えられます。

 

しかし、裁判所の実務では、婚姻の破綻について、婚姻中の夫婦の行為やお互いや家族への態度、性格の事情、未成熟子の有無、資産の状況など、別居期間だけでなく婚姻生活全体を考慮して判断していて、別居期間がどれだけあればよいかという目安は曖昧になっています。
3年程度の別居期間で離婚を認めている例もあります。

 

有責配偶者からの相当期間の別居を理由としての離婚請求が認められるためには、一定の要件を満たす必要があることは先に述べた通りです。
かつ、「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと」が必要になります。

 

財産分与は婚姻期間で得た財産全てが対象ではない

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中(結婚してから離婚するまで)に協力して形成した財産を、離婚の際もしくは離婚後に分けることをいいます。
財産分与の対象になる財産とは、下記の通り2種類に分けられます。


・共有財産…夫婦の共有名義の財産
・実質的共有財産…名義は夫婦の一方だけれども、実質的には夫婦が協力して得た財産

 

婚姻期間中に貯蓄した預金や、婚姻期間中に購入した自宅や不動産、車両、家具、すべて共有財産となります。

 

婚姻期間で得た財産が、どの時点のものを指すのかは、離婚前に別居の期間があった場合に考慮すべき事項です。
別居期間中に築いた財産は、夫婦が協力して形成した財産とは言えません。
そのため、別居から離婚へという流れの場合は、別居した時点の財産を財産分与の対象とします。

 

まとめ

今回は離婚が認められる別居の目安期間などについて解説をしました。

次回は別居前にしておくべき準備などについてみていきます。

 

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【離婚慰謝料請求と時効③】慰謝料請求の時効を中断させる方法

今回は離婚慰謝料請求と時効についての最後の記事になります。

 

慰謝料請求の時効が永久に来ないケースもある

不貞行為の慰謝料請求ケースの中には永久に時効が来ないケースもあります。

不貞行為などの違法行為の時効は原則的に3年です。
ただ、民法159条には夫婦の権利についての定めがあるため注意が必要になります。

 

民法159条には「夫婦の一方が有する他方に対する権利は離婚して6カ月を経過するまで消えません」と記載されています。

夫婦の片方がもう片方に慰謝料請求する場合、離婚後6カ月は権利が消えないというルールです。

 

逆に考えれば配偶者が不貞行為の慰謝料請求権は離婚しない限り消滅しないということでもあります。

夫婦でいる限り永久に時効がやって来ないと考えることもできるのです。
このように、慰謝料請求の時効が永久に来ないケースもあります。

 

離婚慰謝料や不貞行為慰謝料の時効と起算点は慰謝料請求相手やケースにより変わってくるため複雑です。

 

時効の残り期間について正確に把握したい。
自分の慰謝料請求においては起算点がいつになるか知りたい。
このような場合は専門家である弁護士に起算点と時効について計算してもらうことをおすすめします。

 

なお、民法159条はあくまで配偶者に対しての時効ルールです。
不貞行為の相手に慰謝料請求するときは適用されませんので注意してください。

不貞行為の相手への慰謝料請求の時効はすでにお話しした通り3年で、永久に時効が来ないケースはありません。

 

慰謝料請求では時効や起算点で揉めやすい

慰謝料請求の起算点はトラブルになりやすいポイントです。

たとえば浮気相手に慰謝料請求する場合や離婚せずに配偶者に慰謝料請求する場合は「不貞行為を知ったとき」が時効の起算点になります。

 

知ったかどうかは目に見えないため、不貞行為の相手や配偶者から「もっと前から知っていたのではないか」と主張されて揉めることがあるのです。
知ったときがいつかは目に見えないため証明が難しいポイントになります。

 

慰謝料請求の時効間際に慰謝料請求するときは、配偶者や不貞行為の相手から「もっと前から知っていたのではないか(すでに慰謝料請求の時効期間は過ぎているのではないか)」と反論されるリスクが考えられます。
時効や起算点は揉めやすいポイントなのです。

 

スムーズに慰謝料請求するためにも、時効関係で反論されないよう足場固めが重要になります。
弁護士に相談して時効や起算点の確認をするとともに、慰謝料請求の際は対策を講じておきましょう。

 

慰謝料請求の時効を中断させる方法

慰謝料請求をしたいが準備に手間取ってしまい時効間際になってしまった。

 

慰謝料請求しようと決意したときにはすでに時効が迫っていた。
このようなときは、慰謝料請求を進めている間に時効が完成する可能性があります。

 

慰謝料請求の時効には「中断」という方法があります。

時効を中断することにより慰謝料請求の時効は振り出しに(ゼロ)に戻るのです。
たとえば慰謝料請求の時効が2年11カ月経過していたとします。

この時点で中断の方法を取ることにより、慰謝料請求の時効は起算点、つまり0カ月に戻るのです。

 

慰謝料請求が間に合わない場合や手続きがぎりぎりになってしまう場合は中断により時効完成を防ぐことが可能になっています。

時効の中断は具体的にどのようにしておこなうのか、方法を見ていきましょう。

 

慰謝料の請求をおこない時効を中断する

慰謝料請求の時効は請求により中断します。

請求とは支払い側にただ「払ってください」と申し入れることではなく、裁判や調停、和解、支払督促など手続きを使った請求です。

請求をおこなうことにより時効は中断され、再びゼロからカウントがスタートします。

 

内容証明郵便を使って時効を中断する

請求による時効の中断をおこないたくてもすぐに裁判などを起こせないケースもあります。
すぐに請求できないときは内容証明郵便を使った時効中断の方法があるのです。

まず慰謝料の支払い側に内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便を元配偶者(配偶者)や不貞行為の相手に送ると6カ月間時効が止まります。

時効が止まっている間に裁判などの請求をおこなえば、時効の中断効果が得られるのです。

 

慰謝料請求の時効の注意点

慰謝料請求の時効には中断以外にも知っておきたいポイントが3つあります。

 

慰謝料請求の時効は援用によって完成する

慰謝料請求の時効は起算点から数えて時効期間が経過すれば自動的に完成するわけではありません。

 

慰謝料の支払い側が「援用(時効が完成しましたと主張すること)」をおこなってはじめて時効が完成するのです。

つまり、時効期間が経過していても慰謝料を支払う側が時効の援用をしていなければ時効は完成しません。

時効を完成させるかどうかは個人の権利なので、援用して初めて時効が完成するように配慮されているのです。

 

時効期間が経過していても、援用がおこなわれていないケースもあります。
時効間際や時効完成後でも、諦めずに弁護士に相談してみるといいでしょう。

 

慰謝料の自発的な支払いに時効は関係ない

不貞行為の相手や離婚した配偶者などから謝意などで慰謝料の支払いがおこなわれた場合は、時効期間は特に関係ありません。
時効が完成していようが完成していまいが、相手が自発的に支払いをおこなう場合は慰謝料を受け取ることが可能です。

 

時効期間が経過しているからといって受け取れないわけではありません。

 

配偶者や不貞行為の相手が時効の主張ができないケースもある

離婚した元配偶者や不貞行為の相手などが時効の完成を主張しようとしても、主張が許されないケースがあります。

 

たとえば慰謝料の支払い側が慰謝料の一部を支払っている場合は債務を認めたことになりますから、時効完成の主張はできません。
慰謝料の支払い義務を認めたうえで時効を主張するという奇妙な状況になってしまうからです。
離婚した配偶者や不貞行為の相手が慰謝料支払いの姿勢を見せたときも同じく債務を認めたことになりますから、時効の主張ができなくなってしまいます。

 

 

まとめ

離婚慰謝料・不貞行為の慰謝料は基本的に「3年」が時効期間になります。
起算点については請求相手やケースによって変わってくるため注意が必要です。
3年という時効期間の他に20年という除斥期間もあるため注意してください。

 

時効の起算点の確認や期間の計算は法律の専門知識を要する部分です。
計算や起算点を誤ってしまうと、できたはずの慰謝料請求ができなくなってしまいます。

慰謝料請求をミスなくおこなうためにも、離婚慰謝料・不貞行為慰謝料の時効については弁護士に相談することをおすすめします。

 

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【離婚慰謝料請求と時効②】ケースで異なる離婚慰謝料の時効の起算点

この記事では、前回に引き続きケースで異なる離婚慰謝料の時効の起算点についてみていきたいと思います。

 

不貞行為の相手がわからなかったときの時効の起算点(配偶者)

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不貞行為などの慰謝料を請求するときは、配偶者と不貞行為の相手で慰謝料請求の時効の起算点が変わる可能性があります。

 

たとえば不貞行為をした配偶者と離婚せずに慰謝料請求するとします。
このようなケースでは慰謝料請求の時効の起算点は「不貞行為が発覚したとき」です。
不貞行為が発覚したときから3年が時効期間になります。

 

なお、婚姻関係を継続する場合は配偶者には不貞行為の慰謝料請求をおこなわないケースも少なくありません。
離婚せず配偶者に不貞行為の慰謝料請求をしてしまうと、家庭に亀裂が生じてしまう可能性があるからです。
また、配偶者にお金がなければ慰謝料は家計から出ていきます。

 

その慰謝料が不貞行為の被害にあった配偶者の手に渡ることを考えれば、家計から出て行った慰謝料が家計に戻ってくるという結果になることがあるのです。
出て行って戻ってくるケースでは差し引きゼロになってしまうことから、慰謝料請求そのものをおこなわないこともあります。

 

不貞行為があって配偶者と離婚する場合の時効起算点と計算には「離婚のとき(離婚成立のとき)」から起算と計算する方の時効を使って慰謝料請求するケースが多くなっています。

 

不貞行為の相手がわからなかったときの時効の起算点(浮気相手)

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配偶者の不貞行為の相手に慰謝料請求するときの時効の起算点は「不貞行為の事実と不貞行為の相手が判明したとき」になります。
不貞行為の事実が判明し、かつ、不貞行為の相手の名前や住所など慰謝料請求に必要な情報がそろった時点から3年が慰謝料請求の時効です。

 

配偶者の場合は不貞行為が発覚したときから3年であることと比較してください。
配偶者の場合は不貞行為の慰謝料請求に必要な住所や名前といった情報がわからないことがあり得ないため、不貞行為の相手の慰謝料請求時効のように「住所や名前など相手が判明したとき」という条件がなかったのです。

 

不貞行為の相手の場合は顔だけわかるケースや不貞行為の相手がいることは察していたが慰謝料請求に必要な情報を得ていないケースなども考えられます。
慰謝料請求できるくらいの情報がない段階で時効が進行してしまうと、情報収集している間に時効が大部分過ぎてしまいかねません。

 

中には不貞行為の相手の情報を突き止めようとしている間に時効が完成するケースもあることでしょう。

 

そのため、不貞行為の相手に慰謝料請求するときの時効の起算点については、不貞行為の事実を知ったときではなく、不貞行為の事実を知りさらに慰謝料請求できるくらいの不貞行為の相手を知ったときが時効の起算点になるのです。

 

不貞行為の相手に慰謝料請求するときは、配偶者への慰謝料請求時効や離婚慰謝料請求の時効などと混同しないよう注意が必要になります。

 

不貞行為の事実を知らなかったときの時効の起算点

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不貞行為の中には不貞行為後するに慰謝料請求が問題になるのではなく、不貞行為からかなり時間が経ってから不貞行為の事実に気づいて慰謝料請求問題になることもあります。

時間が経ってから不貞行為に気づいて慰謝料請求する場合の時効や起算点はどうなっているのでしょう。

 

不貞行為から時間が経ってから慰謝料請求する場合は慰謝料請求の除斥期間が経過しているかどうかが重要になります。
民法724条には不貞行為の3年という時効の他に20年という除斥期間も定められているのです。

 

不貞行為から20年経過すると、その不貞行為に気づいていようが気づいていまいが、慰謝料請求できなくなります。この場合の20年の起算点は「不貞行為をしたとき」です。

 

たとえば、離婚した元配偶者が10年前に不貞行為したのを不貞行為から10年経ってから知りました。
このようなケースでは20年経過していませんし、不貞行為に気づいたのが不貞行為後10年の時点です。
よって、基本的に慰謝料請求が可能です。

 

では、不貞行為から25年経ったときに元配偶者の不貞行為に気づいたケースはどうでしょう。
不貞行為から25年経っていますから、このケースでは原則的に慰謝料請求はできません。
時間が経ってから不貞行為に気づいた場合は、不貞行為をしたときを起算点にして20年経過しているかどうかで慰謝料請求の可否が変わってくるのです。

 

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【離婚慰謝料請求と時効①】3年の時効とは?

離婚慰謝料の請求をおこなうためには時効に注意が必要です。
慰謝料請求できる理由があっても離婚慰謝料請求の時効が過ぎてしまうと慰謝料請求はできません。

 

スムーズに慰謝料請求するためにも「慰謝料請求できる期間」である時効に気を配ることが重要なのです。

 

この記事から3回にわたって離婚慰謝料請求・不貞行為慰謝料請求の時効や起算点について説明します。
あわせて慰謝料請求の時効が迫っているときの対処法である中断や中断方法についても解説します。

 

離婚慰謝料の時効は原則として3年

離婚慰謝料とは「離婚の精神的な苦痛への賠償金」です。
離婚といえばよく財産分与などが取り上げられますが、離婚慰謝料も離婚に際して問題になる金銭のひとつになります。

 

離婚慰謝料は離婚のときに必ず発生するわけではなく、離婚慰謝料の発生原因があるケースにのみ請求できます。
不貞行為やモラハラ、暴力などが主な離婚慰謝料の発生原因です。

 

離婚慰謝料の時効は原則として「3年」になっています。
この3年という慰謝料請求の時効期間は民法724条に定めがあるのです。
民法724条には不法行為の慰謝料請求は3年が時効であると記載があります。

 

不法行為という言葉から犯罪を想像するかもしれません。
不貞行為も不法行為の一種になります。モラハラや暴力(DV)なども不法行為の一種です。

不法行為とは故意や過失で相手の利益や権利を侵害することをいいます。
不貞行為やモラハラなども故意や過失で被害を受けた配偶者の利益や権利を侵害することですから不法行為のひとつに数えられているのです。
そのため慰謝料請求の時効は民法724条に定められるルール通りに「3年」となっています。

 

離婚慰謝料の請求をするときの問題のひとつに「時効の起算点はいつなのか」があります。

 

ケースで異なる離婚慰謝料の時効の起算点

離婚の起算点が変わってくることで慰謝料請求の可否まで変わってきます。
たとえば平成2年10月1日を離婚慰謝料の時効の起算点にした場合と同年11月1日を時効の起算点にした場合は、いつまで慰謝料請求が可能なのかが変わってくるのです。
前者は後者より1カ月早く時効期間が満了してしまいます。

 

対して後者は前者より1カ月ほど遅い日付まで慰謝料請求できることになるのです。
離婚慰謝料請求の準備を進めている人にとって1カ月の違いは非常に重要なポイントではないでしょうか。

離婚慰謝料請求の進め方にも関わってきます。
このように、離婚慰謝料請求の時効の起算点は慰謝料請求において重要ポイントなのです。

 

離婚慰謝料請求の起算点はケースによって異なります。
離婚慰謝料請求の時効の起算点について、5つのケースごとに図で説明します。

 

離婚慰謝料3年の時効の起算点

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不貞行為やDV、モラハラなどで夫婦が離婚したときの離婚慰謝料の請求時効の起算点は「離婚のとき(離婚が成立したとき)」です。

 

慰謝料とは心の苦痛に対して支払われる賠償金だとお話ししました。
離婚慰謝料の場合は離婚のときに心の苦痛が発生するという考えにもとづき、慰謝料請求の起算点が離婚のときになっています。

 

離婚のときから3年間は離婚慰謝料請求が可能で、離婚のときから3年間離婚慰謝料の請求をせずに放置してしまうと、離婚慰謝料の請求が原則的にできなくなってしまうのです。

 

不貞行為をした配偶者などと離婚して慰謝料請求するときなどによく使われる時効の起算点になります。

 

慰謝料分割払いのときの時効の起算点

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慰謝料は一括払いが基本です。
しかしながら慰謝料はまとまった額になることが少なくないため、支払いする側と受け取る側の交渉次第では分割払いが使われることもあります。
分割払いの場合は慰謝料時効の起算点が変わってくるため注意が必要です。

 

離婚慰謝料を分割払いで受け取るときの時効の起算点は「最後に慰謝料を支払ったときから3年」になります。
どの時点で離婚慰謝料の分割払いが滞ったかによって時効の起算点が変わってくるのです。

たとえば令和2年10月31日が離婚慰謝料の分割払い分が最後に支払われて以降滞納しているとすれば、原則的に10月31日から3年が時効期間になります。

慰謝料を分割払いで受け取るときに支払いが滞ったら時効と起算点に注意して回収を進める必要があります。

 

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慰謝料請求の種類と弁護士に相談するメリット

慰謝料請求されたときは、どのような方法で慰謝料請求されたかによって無視し続けるとどうなるかが変わってきます。

 

慰謝料請求されたときは請求方法に注目することが重要です。
慰謝料請求されるときの方法について説明します。

 

慰謝料請求の方法の種類とは

口頭や文書によって慰謝料請求された

慰謝料請求は必ず裁判所を通す必要はなく、文書や口頭で請求することも可能です。
口頭の場合は直接会って請求したり、電話を使ったりします。

文書の場合は郵便局の内容証明郵便がよく使われています。
この他にメールなどを用いて慰謝料請求することもあるのです。

 

口頭や文書などで慰謝料請求された場合はよく「言った」「言わない」のトラブルになります。
口頭のみでの慰謝料請求は証拠も残らないため、加害者側にとっては無視しやすいのではないでしょうか。

 

注意したいのは内容証明郵便による慰謝料請求です。
内容証明郵便での慰謝料請求は発送したことと内容が郵便局に記録として残ります。
手紙は証拠が残らないだろう。「受け取っていない」と主張すれば、後から無視したことの言い訳にできると思うかもしれません。

内容証明郵便は事実が残るため言い訳が難しくなります。注意してください。

 

支払督促によって慰謝料請求された

裁判所には通常訴訟の他にもいくつかの手続きがあります。
支払督促は裁判所の手続きのひとつです。

裁判所の書記官に申し立てて、加害者に支払い督促を裁判所の名前で送付してもらう手続きが支払督促になります。

 

督促は個人でもおこなわれるため、裁判所から発送される支払督促を個人の督促と同じように考える人もいます。

支払督促は裁判所が関与するため、個人の督促にはない力が認められているのです。
支払督促を無視するリスクについては後の見出しで説明します。

 

裁判所の調停により慰謝料請求された

裁判所の調停手続きとは、裁判所の一室で調停委員という学識豊かな第三者を交えて、話し合いによる慰謝料請求問題を解決する方法です。

裁判所といえば裁判や判決という印象があるかもしれません。
しかし調停の場合は話し合いとしての性質が強い手続きになります。判決はありません。

調停は話し合いがまとまると成立し、話し合いが決裂すると不成立になります。

 

裁判所の訴訟によって慰謝料請求された

証拠や主張を出し合い、最終的に裁判官が判決を下す手続きが訴訟です。
訴訟は調停のような話し合いではありません。

 

被害者側と加害者側の主張が食い違っていても、最終的に判決により決着します。
加害者が慰謝料再給されたのを無視していても判決を下すことができるため、慰謝料請求問題の最終的な解決方法として使われるのが訴訟です。

 

慰謝料請求されたときに弁護士に相談するメリット

慰謝料請求されたのを無視することにはリスクがあります。
不利益な立場にも立たされ、加害者側にとって無視にメリットはありません。

 

すでに無視している場合は、被害者側が訴訟などの準備をしていることも考えられるのです。
迅速に慰謝料請求問題について解決するためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士に相談することには3つのメリットがあります。

 

1.慰謝料請求されたときに無視しても訴訟になる前に解決できる

慰謝料請求されたときに無視すると「話し合いは難しい」と判断されて訴訟などに発展するリスクが高くなります。

すでに無視しているときは弁護士に依頼して、早急に慰謝料問題の解決について動けば、訴訟を回避できる可能性があるのです。

 

自分で動くと法的知識や交渉知識、経験などの乏しさから、相手の方が先に訴訟を提起する可能性があります。

実務経験や示談交渉の知識が豊富な弁護士に相談することで効率的に動けますので、訴訟になる前に適切な行動や交渉で解決できる可能性が高くなります。

 

2.慰謝料請求されたのを無視して訴訟などになっても任せられる

慰謝料請求されたときに無視して訴訟になったとしても、弁護士に依頼しておけば対応を一任できます。
訴訟の出席や訴訟の答弁書なども弁護士に一任でき、弁護士は依頼者のたえに動いてくれます。

 

弁護士と方針について相談しておけば、基本的に自分は手続きの報告を受けるだけで差し支えありません。

 

3.無視した後にも適切な条件で和解や示談交渉できる

慰謝料請求されたのを無視していると、被害者の心証に関わります。
また、慰謝料を増額されるなど、条件的にも不利になる可能性があるのです。
弁護士に依頼することで不利な条件でも和解や示談を回避できます。
仮に相手が増額で慰謝料請求してきた場合や不利な条件をつけてきた場合でも、弁護士が適切な額や条件を提示し、適切な慰謝料額や条件での和解や示談が可能なのです。

 

 

慰謝料請求されたのを無視することは、請求された側にとってメリットはありません。
むしろ訴訟リスクや不利な立場に立たされるなど、デメリットばかりです。
慰謝料請求は無視せず、早めに適切な対処をすることが重要です。

 

無視してしまった場合は弁護士に相談しましょう
早めに相談することで、弁護士による対応でデメリットを回避できる可能性があります。
弁護士に相談して、トラブルが深刻化する前に解決してはいかがでしょう。

 

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慰謝料請求されたのを無視し続けるとどうなる?NG対応例も

慰謝料請求されたときに無視を続けていればいずれ相手は諦めるだろう。
無視していれば解決するだろうと思っていませんか。

 

慰謝料請求されたときに無視を続けることは得策ではありません。
慰謝料請求されたときに無視を続けることにより、請求された側である自分が不利になる可能性があるのです。

 

すでに慰謝料請求されたのを無視している人は、あらためて対応について考えてみてはいかがでしょう。

 

この記事では、慰謝料請求されたが無視を続けているとどうなるか説明します。
あわせて、慰謝料請求されたのをさらに無視しているとどうなるのか、NG対応など、今後の対処のヒントになる知識も解説します。

 

慰謝料請求されたのを無視し続けるとどうなる?

訴訟や支払督促、口頭や書面での請求、支払督促などそれぞれの方法によって慰謝料請求されたときに無視を続けるとどうなるのでしょうか。

無視し続けた場合にどうなるか方法ごとに説明します。

 

口頭や文書によって慰謝料請求されたのを無視し続けた

口頭や文書で慰謝料請求されたのを無視し続けると、調停や訴訟などの裁判所手続きを使われる可能性があります。

文書や口頭でいっても無視されるなら、無視されない方法で慰謝料請求問題を解決するしかありません。

文書や口頭での慰謝料請求と異なり「裁判所での手続きなら出てくるだろう」と被害者側が考える可能性があるのです。
文書で慰謝料請求されたときの文書が残っていれば、訴訟などで証拠として使われる可能性もあります。

 

たとえば内容証明郵便の場合は郵便局に内容と送付の事実が残りますから、口頭や文書によって慰謝料請求されたのを無視し続けると、訴訟などで証拠として使われる可能性があるのです。

仮に証拠として使われた場合「解決の機会があったのに無視した」と裁判官が感じるかもしれません。
心証によって加害者側に不利な判決が出る可能性があります。

 

支払督促によって慰謝料請求されたのを無視し続けた

支払督促は異議申し立てなく2週間が経過すると、強制執行の材料になります。
つまり、無視し続けると支払督促を使った強制執行がおこなわれる可能性があるのです。

慰謝料請求の支払督促を無視していると強制的に財産をおさえられ、慰謝料を回収されるリスクがあります。

 

調停により慰謝料請求されたのを無視し続けた

調停はあくまで当事者の話し合いですから、無視するとまとまる話し合いもまとまりません。
調停を無視し続けると「調停という話し合いの場で解決することは無理だろう」という判断から訴訟になる可能性があります。

 

仮に調停を無視し続けて訴訟になった場合、当然ですが調停を無視し続けていたことを被害者側から指摘されるはずです。
裁判官の心証にも関わり、不利な判決が出る可能性もあります。

 

訴訟により慰謝料請求されたのを無視し続けた

訴訟により慰謝料請求されたのを無視し続けると、加害者側に不利な判決が出る可能性が極めて高くなります。

訴訟の第一回期日は、書面さえ提出しておけば陳述擬制(本人が陳述したと見なされる)があるので、特に問題ありません。

 

しかし、第二回目以降には陳述擬制はありません。
また、第一回目の時点で書面すら提出していない場合には、陳述擬制はありません。加害者側に不利な結果になってしまうのです。

 

慰謝料請求されたときの対応NG例

慰謝料請求されたときに無視することにはリスクが伴います。
無視は、慰謝料請求においてしてはいけないことなのです。

無視以外にも慰謝料請求されたときにしてはいけないNG行動があります。
慰謝料請求されたときの無視以外のNG行動についても知っておきましょう。

 

慰謝料請求されたときにウソをつく

慰謝料の額は加害者側の態度によっても増額されます。
証拠があるのに不倫などを認めずウソをついてしまうと、慰謝料が上乗せされるリスクがあるのです。

 

確固たる証拠がないだろうと思ってウソをつくと、かえって被害者側が躍起になって証拠の準備をおこない、極めて不利な立場になる可能性もあります。
慰謝料請求されたときは無視以外にウソをつかないよう注意することも重要です。

 

慰謝料請求されたときに感情的に応じること

すでにお話ししましたが、加害者側の態度も慰謝料額に関係します。
被害者が慰謝料の示談交渉を申し入れてきたときや口頭で慰謝料請求してきたときなどに感情的に応じてしまうと、慰謝料額を増額されてしまう可能性があります。

 

加えて相手の心証を害し、慰謝料の減額などを申し入れても聞く耳を持ってもらえない可能性もあるのです。
また、感情的になってしまうと暴言や失言をしやすくなります。
暴言や失言により、慰謝料請求で不利な立場に立たされるリスクもあります。

 

慰謝料請求されたときに確認せず書面に記名押印する

被害者側が押しかけてきて示談書などに記名押印を求めることがあります。
慰謝料の話を早く終わらせたい。
押しかけられると迷惑。

このような気持ちで内容をよく確認せず記名押印すると、不利な立場に立たされてしまいます。

 

示談は基本的にやり直しできません。
記名押印してしまうと示談書を証拠に不利な立場に立たされてしまうことでしょう。

 


被害者側の押しかけがあれば、迷惑行為の問題になります。
示談書などを提示されたときは内容をよく確認し、わからないところや不安な点があれば弁護士に確認するようにしましょう。

 

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慰謝料請求を無視するのがだめな理由

慰謝料請求を無視することは得策ではありません。
なぜなら、無視を続けることによって慰謝料請求された側が不利になるだけだからです。

 

慰謝料請求されたが無視を続けているとトラブルが深刻化し、穏便に解決できたはずの慰謝料請求が訴訟問題になるなど、解決がより困難になります

 

慰謝料請求されたのを無視するとなぜダメなのか。
慰謝料請求されたトラブルがどのように深刻化するのか。
もう少し具体的に見てみましょう。

 

1.慰謝料請求されたのを無視すると示談交渉で不利になる

慰謝料請求を無視すると示談交渉で不利になるリスクがあります。
慰謝料の交渉においては、加害者側の態度も交渉材料や慰謝料算定の材料になるのです。

 

示談交渉は慰謝料について決める話し合いですから、被害者側から「話し合いをしよう」と持ちかけているのに加害者が無視しては、話し合いの余地はありません。

交渉次第では話し合いだけで穏便にまとめられ、なおかつ慰謝料額についても加害者が真摯に応じることで考慮してもらえる可能性もあったのに、慰謝料請求されたのを無視することで、せっかくの話し合いでの解決や慰謝料額に配慮してもらえるチャンスをふいにしてしまったことになるのです。

 

仮に一度無視してから慰謝料請求の示談交渉をしたいと申し入れても、被害者側は減額などの交渉に取り合ってくれないかもしれません。

慰謝料請求されたのを無視していたのに減額などを申し入れてくるのは虫の良い話ではないかと、交渉自体に応じない可能性もあります。
被害者側の心証もよくない他、訴訟などになったときは無視したことを被害者側に主張され不利になるかもしれません。

このように、示談交渉や慰謝料額や話し合いによる解決、被害者側の心証という点で、慰謝料請求されたのを無視することはダメなことなのです。

 

2.慰謝料請求されたのを無視すると訴訟になる

慰謝料請求されたのを無視されると、訴訟リスクが高くなります。
なぜなら示談交渉で慰謝料請求問題を解決できないからです。

 

慰謝料の請求は基本的に示談交渉からスタートします。
被害者側が慰謝料を請求し、慰謝料額や条件を被害者と加害者が話し合う(示談交渉する)ことで決めます。

慰謝料請求されたのを無視すると示談交渉が進みませんから、話し合いで解決することは難しいと判断される可能性があるのです。
話し合おうにも慰謝料請求を無視しているのですから、被害者側には手の打ちようがありません。
加害者を慰謝料請求の場へと引っ張り出すには、訴訟などの裁判所手続きを使うしかないと判断されるはずです。

 

訴訟になって慰謝料請求されたのを無視していたことを詫びたり、訴訟になってから真摯に対応したりしても、後の祭りです。

被害者にはすでに慰謝料請求を無視されたことに対する心証があります。
また、実際に無視したという事実があるため、訴訟で無視について追及されて不利になる可能性があるのです。

 

慰謝料請求を無視すると訴訟リスクが高くなり、さらに訴訟でも不利になるということです。

 

3.慰謝料請求されたのを無視すると不倫をバラされることも

慰謝料請求されたのを無視していると、不倫をバラされたり悪評を振りまかれたりするリスクがあります。

 

被害者側が冷静なら慰謝料請求されたのを無視されたからといって、不倫の事実をばらまいたりすることはありません。

しかし、不倫などの事実があり、さらに慰謝料請求されたのを無視されたとなれば、さすがに被害者側も冷静ではいられないかもしれません。
頭に血が上ってしまい、普段はしないような過激な行動や、加害者が予想していないような行動をするかもしれないのです。

 

会社や家に尋ねてきたり、家族や同僚、友人などに不倫などのこと、そして慰謝料請求を無視していることを言いふらされたりするかもしれません。
慰謝料請求を無視したからといって言いふらした会社などにやってくることが許されるわけではありませんが、冷静さを欠いてしまうと、このような行動をしないとも限りません。

 

また、仮に会社や家に来訪されたり、不倫などを言いふらされたりすると、慰謝料請求されたときに無視していることもあって、周囲からの信頼に傷がつくリスクもあるのです。

 

信頼を守り被害者に過激な行動を取らせないためにも、慰謝料請求されたのを無視することは得策ではありません。

 

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年金分割をしたくない場合

今回は、年金分割をしたくないという方からのご相談です。

 

ご相談

妻と離婚することになりました。

大体の離婚条件も話し合いが済んでおり、親権は妻で、養育費や財産分与についてもおおむね決まっています。

一つ心配なのが、年金分割のことです。

私は結婚期間中の15年間ずっと厚生年金に加入しており、妻は専業主婦でした。

このような場合、年金分割を妻が求めた場合には必ず応じなければならないのでしょうか。

今のところ妻からは何も言われていませんが、分割しないで済む方法があれば、正直分割したくありません。

養育費や財産分与は相場以上に払う予定なので、年金まで取られるのは避けたいのが本音です。

 

アドバイス

年金分割の制度が始まり、気にされる方も多くなりましたね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

年金分割制度とは

年金分割は、結婚期間中に厚生年金保険料を納付していた場合に、その納付実績を夫婦で分け合う制度です。

分割を受けた側は将来受け取る年金額が増えることになり、分割された側は将来受け取る年金額が減ることになります。

相談者様のケースでは、相談者様が厚生年金保険料を納付しており、奥様は専業主婦で扶養に入っていたということなので、相談者様の納付実績を夫婦で分け合うことになります。

 

年金分割には3号分割と合意分割がある

この年金分割には、3号分割と合意分割があります。

3号分割と合意分割の違いは、分割される年金保険料の納付期間の範囲です。

3号分割の場合、平成20年4月以降の厚生年金の納付実績が対象となり、合意分割の場合には結婚期間全体の厚生年金の納付実績が対象となります。

 

3号分割については、請求者が一人で年金分割の手続きをすることができます。

 

一方、合意分割の場合には、夫婦で合意(調停などによる決定を含む)をする必要があります。

 

そのため、もしも相談者様の奥様が3号分割をしようとすれば、相談者様の合意がなくても一人で手続きができるということです。

これを阻止する方法は、残念ながらありません。

 

一方、合意分割については、基本的に夫婦での合意ができなければ奥様は手続きをすることができません。

年金分割について話し合い、奥様が年金分割の権利を放棄してくれるのであれば、分割せずに済みます。

 

放棄してもらうかあえて年金分割に触れないか

年金分割をしたくない場合、現実的な選択肢としては2つあると思います。

一つ目は、年金分割について奥様と話し合い、年金分割はしないという同意を得ることです。

年金分割をしないという合意ができた場合、それをきちんと書面に残すことが大切です。

離婚協議書を作成する際、「年金分割を行わないことに合意した」という内容をしっかりと記載しておきましょう。

 

ただし、この合意をした場合でも、3号分割については奥様一人で手続きができてしまうため、それを阻止することは現実的には難しいと言わざるを得ません。

 

奥様に年金分割をしないことに納得してもらうためには、財産分与などで奥様の意向をできるだけ尊重するなど、年金分割以外の面でメリットがあるようにして説得すればスムーズに話し合いが進む可能性があります。

 

二つ目の方法は、年金分割について自分からは何も話さないことです。

年金分割の請求ができるのは、離婚から2年以内です。この期限を過ぎると、手続きができなくなります。

奥様の性格にもよりますが、2年間請求しそうもないのであれば、あえて自分から年金分割の件には触れずに離婚してしまうと言うのも選択肢の一つです。

ただし、上述のとおり3号分割については離婚後も奥様一人で手続きができますので、2年以内に年金分割のことを思い立ち、一人で手続きをしてしまう可能性は十分にあります。

年金分割については認知度も上がってきているため、奥様が知らない可能性は低いと考えられます。

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私立学校の学費と養育費について

今回は、子どもが私立中学校に通っている場合の養育費についてのご相談です。

 

ご相談

現在、夫と離婚についての話し合いをしています。

私たちには中学生の子どもがおり、離婚後は私が親権者となる予定です。

この場合の養育費について教えてください。

夫は、家庭裁判所の養育費算定表をそのまま使って養育費を決めればよく、学費も養育費に含まれると言っていますが、それでは私立中学校の学費の負担が大きく不公平だと感じます。

私立中学校に通っている場合、学費については養育費と別に支払ってもらうことはできるのでしょうか。

 

アドバイス

お子様が私立学校に通っている場合、学費のことは気になりますよね。私にできるアドバイスをさせていただきます。

 

養育費算定表では私立の学費は考慮されていない

養育費を決める際、家庭裁判所が採用している「養育費算定表」を使って養育費の基準額を確認するケースは多いでしょう。

この算定表では、夫婦の収入、子どもの年齢、人数を基に簡単に養育費の基準額を知ることができ、便利です。

養育費算定表の金額には、子どもの衣食住にかかる費用や教育費も含まれています。

ただし、この簡易的な算定表では、個別の事情までは考慮していません。

私立学校の学費は算定表では考慮されておらず、一般的な公立学校に通っている前提での算定方法です。

そのため、私立学校に通っている場合には、それを考慮したうえで養育費を決めるべきものと考えられます。

 

学費について養育費の増額請求が認められる場合

養育費について合意できない場合、調停を申し立てることになるかと思います。

調停でも当事者同士が合意できない場合には、審判の手続きに移行し、裁判所が一切の事情を考慮したうえで養育費を決定することになります。

 

私立学校に通っていることを理由に算定表よりも高額な養育費を請求した場合、それが認められるケースと認められないケースがあります。

 

認められやすいケースとしては、以下のようなものがあります。

 

①親が高学歴

両親が高学歴という場合、その親の子どもも同じように高度な教育を受けることは自然なことであり、そのための費用を親が負担すべきであると判断される可能性があります。

 

②私立学校に通うことに同意していた

離婚する前から夫婦が子どもが私立学校に通うことに同意しており、すでに子どもが私立学校に通っている場合には、私立学校の学費についての養育費増額が認められやすくなります。

 

③請求される側の収入が多い

請求される側の収入が多い場合には、養育費算定表の金額以上の負担をすることは困難ではないと考えられるため、増額が認められる可能性が高くなります。

 

認められにくいケースとしては、以下のようなものがあります。

 

①請求される側の収入が低い

請求される側の収入が低く、養育費算定表以上の金額を支払うことが現実的に困難な場合には、増額は認められにくい傾向があります。

 

②私立学校に通うことに同意していない

私立学校に通うことに対し、元々配偶者が同意していなかったようなケースでは、増額が認められにくい場合があります。

 

まとめ

子どもが私立学校に通っている場合には、養育費算定表の金額をそのまま採用するのではなく、学費も考慮して金額を算定するのが一般的です。

たとえば、年間の学費が100万円という場合、夫婦の収入に応じて夫が6割負担することとする場合には、年間60万円、月5万円を増額するなどの方法が考えられます。

 

養育費はあくまでも子供のためのものなので、そのことをご主人に伝えて話し合いをするとよいのではないでしょうか。

当事者同士の話し合いで折り合いがつかない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てる方法も考えてみてください。

また、養育費について取り決めたときは、不払いになるのを避けるために公正証書を作成することをお勧めします。

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