今回は、子供を連れて妻が一方的に家を出て行ってしまった方からのご相談です。
ご相談
夫婦関係が悪化して喧嘩が絶えなくなり、離婚の話も出ている状況の中、妻が子供を連れて出ていき、一方的に別居を始めました。
妻にはメール等で連絡して子供を連れて戻ってくるように呼びかけましたが、返事はありません。
子供は小学生二人で、妻の実家で生活しているようです。
このように一方的に子供を連れて出ていくことに問題はないのでしょうか。
子供を連れ戻す方法や、今から私にできる対応策があれば教えてください。
アドバイス
突然奥様が子供を連れて出て行ってしまい、さぞ困惑されていることと思います。
私にできるアドバイスをさせていただきます。
一方的に子供を連れて出ていくと違法と解釈されることもある
たとえ自分の子供であっても、勝手に連れて出ていってしまうと「違法な連れ去り」と判断される可能性があります。悪質なケースでは、「未成年者略取罪」という犯罪になる可能性もあります。
違法な連れ去りと判断される可能性が高い事例
・学校や幼稚園から子供を無断で連れ出した。
・子供を待ち伏せして無断で連れ出した。
違法ではないと判断される可能性が高い事例
・子供を虐待から守るために無断で連れ出した。
・自分がDV被害に遭っており、無断で子供と一緒に家を出た。
子供を連れ戻す方法
子供を連れ戻すためにはどのような方法があるでしょうか。
相手が勝手に子供を連れだしたのだから、自分も子供を無断で連れ戻したいと考えるかもしれませんが、それは基本的には認められません。
監護者指定及び子の引渡審判の申し立てを行う
子供を連れ戻すための方法として、家庭裁判所に監護者指定と子の引渡審判の申し立てを行う方法があります。
監護者というのは、子供と一緒に暮らして世話をする人のことです。
ただし、この申し立てをしても必ず監護者として自分が指定され、子の引渡が認められるわけではありません。
また、裁判所の手続きなので結論が出るまでには時間がかかります。
子供の監護権者の指定や引渡の審判においてポイントとなることを紹介します。自分に勝算があるかを考えたうえで、申し立てを検討してはいかがでしょうか。
①連れ出した時の状況
別居の開始と同時に子供を連れて出て言った場合、後から子供を連れだした場合よりも子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。
これは、後から強引に連れ出した状況とは異なり、穏やかな形で子供を連れて行ったと考えられるからです。
②主に養育していたのがどちらか
子供を連れだした親が、別居前から主に子供の世話をしていた場合には、子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。
主な養育者だった親が別居するときに子供を置いていくと、子供の世話が適切に行われない可能性があり、かえって子供に不利益があると考えられるからです。
多くの家庭では母親が主な養育者となっているため、母親による連れ出しが行われた場合に、父親への引渡しが認められる可能性が低いという現実があります。
③現在の子供の養育環境
連れ出された子供の現在の養育環境に問題がなければ、子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。
衣食住に問題のない環境で、これまで通りきちんと学校に通い平穏な生活を送っている場合には、子供の環境を変える必要はないと判断されるため、子供を引き渡す必要性が認められないからです。
④引き渡し後の養育環境
子の引渡しを実現した場合に、子供を適切に養育できる環境が整っていなければ、子供の引渡しが認められる可能性が低くなります。
現実的に子供を自分が養育できる環境ではない場合には、申し立てをしても無駄になってしまう可能性が高いでしょう。
まとめ
相談者さんの状況で、元々奥様が主に子供の世話をしていた場合には、連れ戻しをするのは難しいと言わざるを得ません。
ですが、その場合でも、子供との面会を求めることは続けた方がよいでしょう。
可能性が低いからと子供との接触を諦めてしまうと、親権争いの際にも不利になってしまいます。難しい状況ではありますが、できるだけ子供とコミュニケーションを取れるように働きかけてみてはいかがでしょうか。