今回は、DVで悩んでいる方からのご相談です。
【ご相談】
私は夫からのDVに悩んでおりできれば離婚したいと思っています。
毎日ではありませんが、夫は機嫌が悪いと私に「死ね」などと暴言を吐いたり、物を投げつけてきたり、何度か殴られたこともあります。
夫からは「お前がだらしないから」といわれることが多く、実際に私は少し掃除が苦手などの問題があることも事実です。
このような状況で離婚することはできるのでしょうか。
【アドバイス】
リラックスできるはずの家庭において、ご主人からモラハラ・DVを受けることはとても辛いことですね。
このような状況の時は、ご自身の心と体を守ることが何より大切です。
私のできるアドバイスをさせて頂きますね。
1.DVとはどのようなものか。
DV(ドメスティック バイオレンス)というのは、配偶者などから受ける暴力のことです。配偶者「など」というのは、内縁関係や恋人も含まれるからです。
暴力には、身体に受ける暴力のほか、それに準ずる心身に悪影響を及ぼす言動が含まれます。
殴る蹴るといった身体的暴力のほか、「精神的暴力」、「性的暴力」、「経済的暴力」などもあります。
精神的暴力は、相手のことを無視し続けたり、相手の存在を否定する言葉を言い続けたり、大声を出して威嚇したりして相手を精神的に追い詰める行為です。
性的暴力は、相手の意思に反する性行為を強要したり、相手の意思に反して避妊をしないなどの行為です。
経済的暴力は、生活費を渡さなかったり、相手のお金を取り上げて勝手に使ってしまうなどの行為です。
相談者さんの場合は、「身体的暴力」、「精神的暴力」を受けているように見受けられます。
ご主人が「お前がだらしないから」と言うとのことですが、DV加害者は、相手に罪悪感を抱かせて自分が優位に立ち、支配的な態度をとる傾向があります。
掃除が苦手なだけで暴力が正当化されるようなことは絶対にありませんので、ご自身を責めないようにしてください。
2.DVで離婚が認められるためには
離婚は、夫婦で合意すればどのような理由でもすることができますが、相手が同意しなければ法律上離婚が認められる「法定離婚事由」があることが必要です。
DVは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると認められれば、法定離婚事由として認められます。
では、婚姻を継続しがたい重大な事由といえるDVとは、どのようなものでしょうか。
【DVが頻繁、重度のものであること】
DVの頻度が高ければ高いほど、程度が重ければ重いほど離婚事由として認められやすくなります。
DVが日常的に行われていたり、暴力の程度がひどいほど認められやすくなるでしょう。怪我をするような暴力を振るわれている場合には、認められやすくなります。
DVを行ったのが一度限りであったり、軽くたたいただけの場合などは認められることは難しくなります。
相談者さんの場合は、暴言や暴力の程度がわからないのと、頻度としては日常的というわけではないようなので、離婚事由と認められるかは判断しかねますが、そのような場合でも、ほかにも夫婦関係が破綻しているような事情があれば離婚が認められることがあります。
夫から受けた仕打ちや夫の問題行動については、できるだけ記録を残しておくようにしましょう。
3.DVの証拠とは
DVを原因として離婚を請求したり、慰謝料を請求したりする場合には、証拠が必要となります。
証拠としては、次のようなものがあります。
①病院の診断書・・・DVを受けたときに病院に行ったら診断書を取りましょう。
②傷跡の写真・・・DVを受けたときにけがをしたり痣ができたりしたら、写真に残しておきましょう。
③DV被害を受けたときの動画、音声の記録・・・なかなかご自身で撮るのは難しいかもしれませんが、これらを撮ることができれば記録しておきましょう。
④日記などの記録・・・DVを受けたら、その都度状況などを記録しておきましょう。
相談者さんも、もう被害を受けないことが望ましいですが、万一被害を受けた場合にはこのような証拠を残すようにしましょう。
4.身を守るためには
DV被害にあっている方は、ご自身の身を守ることが何よりも大切です。
離婚の準備をすることももちろん大切ですが、もし身の危険を感じるほどの状況であれば一刻も早く逃げましょう。
DV被害にあっている人のためのシェルターが全国にあります。DVシェルターでは配偶者に居場所を知られないための配慮がされていますので、安心して過ごすことができます。必要に応じて、自治体の相談窓口などで相談してみてください。
5.まとめ
DVの被害を受けて離婚したいと考えている場合、まずは自分の身を守ることを優先してください。
そのうえで、無理のない範囲で証拠を残すようにしましょう。
もし相手と話し合いができる状況であれば、離婚を申し入れ、相手が離婚に応じなかったり、DVを認めない(慰謝料を支払わない)場合には、離婚調停の申し立ても検討しましょう。