今回は、ギャンブル依存症のご主人との離婚を考えている方からのご相談です。
【ご相談】
私の夫はギャンブル依存症だと思います。
給料のほとんどをギャンブルに使ってしまい、生活費はほとんど受け取っていません。
ギャンブルのために借金もしており、もうギャンブルはやめてほしいと繰り返し頼んできましたが聞く耳を持ちません。
このままでは自分や子供の将来が心配なので、離婚したいと思っています。
相手のギャンブルを理由に離婚することはできるのでしょうか。
【アドバイス】
ご主人がギャンブル依存症とのことで、とても不安で苦しい思いをされていることと思います。
私にできるアドバイスをさせて頂きますね。
1.ギャンブル依存症とは
依存症は脳の病気で、ギャンブル依存症は本人がギャンブルを止めようとしても止められない状態です。
止めさせるためには、家族のサポートが不可欠です。
お辛い状況とは思いますが、まだやり直せる余地が少しでも残っているのであれば、家族として次のような対応を検討してみてください。
①医療機関を受診させ、適切な治療を受けさせる。
②ギャンブルに使うお金を引き出せないように銀行口座などを管理する。
③ギャンブル以外に関心を持たせるために、家族ででかけたり健康的な趣味を一緒に行う。
④ギャンブル依存症の問題に取り組む自助グループなどに参加させる。
ギャンブルを止めない配偶者にいら立ち、強い言葉で責めてしまったり、四六時中行動を監視しようとしてしまいたくなるかと思いますが、そのようなことをすると逆効果となる場合が多いようです。
また、ギャンブル依存症は本人だけでなく、ご家族の心のケアも大切です。
無理なさらず、状況に応じて心療内科を受診したり、ギャンブル依存症の家族を持つ人たちのグループに参加するなども検討してみてください。
2.ギャンブル依存症を原因に離婚ができるか
家族がサポートしてギャンブル依存を治す努力をしても、本人に治す意志がなかったり、途中で挫折してしまうなどして改善しないことも残念ながら多いです。
それくらい、依存症は恐ろしいものです。
では、ギャンブル依存症を理由に離婚は認められるでしょうか。
離婚は夫婦で納得すればどんな理由でもすることが可能ですが、どちらかが離婚を拒否する場合には、民法で認められた「法定離婚事由」がなければ離婚することができません。
法定離婚事由の中に、「ギャンブル依存症」はありませんが、ケースによっては「婚姻を継続しがたい重大な事由」または「悪意の遺棄」に該当するとして、離婚が認められることがあります。
「悪意の遺棄」というのは、夫婦としての義務である「同居して互いに協力して扶助する」義務を守らないことです。
ギャンブル依存症の場合、自分の収入をほとんどギャンブルにつぎ込んで生活費を払わなかったり、家族の貯金を使い込んだりして「協力、扶助」の義務を怠っていると認められることがあります。
「婚姻を継続しがたい重大な事由」は、単に配偶者が「ギャンブル依存症」というだけでなく、「ギャンブル依存症」が原因で夫婦関係が破たんしていて回復の見込みもない、という状態になっていれば離婚が認められることとなります。
3.離婚が認められやすいケースとは
ギャンブル依存症の配偶者との離婚が認められやすいのは、次のような事情があるケースです。
・ギャンブルのために多額の借金をし、家族の預金にも手を付けている。
・給料の大半をギャンブルに使って、生活費を払わない。
・ギャンブルを止めるように諭すと暴言や暴力をふるったりして聞く耳を持たない。
・一時的、少額でなく、長期にわたり多額のお金をギャンブルに費やしている。
相談者さんのご主人の場合も、給料の大半をギャンブルに費やしており、生活費をほとんど渡しておらず、相談者さんが止めても聞く耳をもたないということなので、離婚が認められる可能性は比較的高いケースでしょう。
4.離婚する場合の注意点
ギャンブル依存症の夫との離婚を決心した場合に、注意すべきことがあります。
まず、ギャンブルのために借金をしている場合に、自分が連帯保証人などになっていないかを確かめましょう。
連帯保証人になっていると、夫と同様に借金の支払い義務があり、これは離婚しても逃れることはできません。
ギャンブル依存症の夫は家族の実印などを勝手に使って、家族の名前で借金をしているといった悪質なケースもあります。
もしこのようなことがあれば、自分で対処することは難しいので弁護士に相談した方がいいでしょう。
悪質な貸金業者から借り入れがあるような場合は特に危険です。
また、養育費や財産分与の取り決めについては、きちんと公正証書を作成しておいた方がよいでしょう。
まとめ
ギャンブル依存症の配偶者との離婚は、相手が拒否した場合でも程度によっては法律上離婚が認められる理由となりえます。
離婚を考える場合、離婚できるかどうかの検討に加え、自分たちが金銭的なトラブルに巻き込まれないように借金の内容なども確認しましょう。
一刻も早く縁を切りたい、という気持ちになりがちですが、できるだけ冷静に対処し、養育費等についてもきちんと取り決めることが大切です。