借金による養育費と財産分与への影響について

今回は、夫から「借金があるので養育費も財産分与も支払えない」と言われた方からのご相談です。

 

ご相談

夫と離婚することが決まりました。お互いに言い分はあり、一方だけが悪いわけではないので慰謝料は請求し合わないということで納得しています。

私たちには小学生の子どもがおり、離婚後は私が親権者となり子どもを育てていきます。

夫に養育費や財産分与の請求をしたところ、借金の返済があるので一切支払うことはできないと言われました。私自身にも収入はありますが、借金を理由に養育費や財産分与を払わないことなど認められるのでしょうか?

 

アドバイス

ご主人から借金を理由に養育費や財産分与の請求を拒否されてしまったとのことですね。私にできるアドバイスをさせて頂きます。

養育費と財産分与については、別々に考える必要があります。

 

財産分与について

財産分与は、結婚期間中に夫婦で形成した財産(共有財産)を、離婚時に分け合う制度のことで、基本的には2分の1ずつの割合で分けることになります。

財産分与は、結婚期間中に得た財産であれば、夫名義のもの、妻名義のものを問わず対象となるのが基本です。

ただし、相続によって得た財産については財産分与の対象とはなりません。

 

財産分与をする際に、借金がある場合はどのように扱うかというと、まずはその借金が財産分与で考慮すべき借金かそうでないかを判断します。

財産分与で考慮すべき借金とは、家族で住む家の住宅ローンや、子供のための学資ローン、家族の生活費のための借金などのことです。

自分の遊興費のための借金やギャンブルでの借金、浪費のための借金などは財産分与で考慮すべきものとは判断されません。

 

財産分与で考慮すべき借金である場合、その借金と、プラスの夫婦の財産を比較したとき、借金の額の方が多ければ、基本的に財産分与を請求することはできません。

 

たとえば、夫婦の共有財産が500万円、住宅ローンの残債の額が1000万円の場合には、借金の方が多いため、財産分与を請求することはできないのが通常です。

 

ただし、借金についても夫婦で分割しなければならないかというとそんなことはなく、借金の支払い義務があるのはあくまでも借金の名義人(債務者)ということになります。

 

今回の相談者様のご主人の借金がどのような内容であるかはわかりませんが、借金が財産分与で考慮すべき性質のものである場合には、借金の方が共有財産よりも多ければ財産分与の請求ができない可能性が高いと考えられます。

 

養育費について

 養育費については、夫と妻の収入及び子どもの年齢、人数をもとにして、家庭裁判所で採用する「養育費算定」で基準となる金額を確認し、この金額に個別の事情を考慮して決定するのが一般的な方法です。

 

たとえ借金がある場合でも、支払う側に収入がある限り、養育費がゼロということは基本的に考えられません。

養育費の支払い義務は、親の子に対する扶養義務に基づくものですが、扶養義務の中でも「生活保持義務」に基づくものとされています。

生活保持義務とは、自分と同程度の生活を子どもに保たせる義務のことであり、自分の生活が苦しい場合でも、それを分け与える義務があるという重い義務になります。

 

このようなことから、相談者様のご主人の借金がどのような内容であるかを問わず、ご主人に収入がある限りは、養育費の支払い義務を逃れることは基本的にできません。

 

相手と養育費についての話し合いが上手くいかない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることも検討してみてはいかがでしょうか。

調停委員からも養育費がゼロにならないという助言はされることになり、ご主人も第三者の意見を聞けば納得する可能性があります。

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